2017年6月14日水曜日

埼玉県警による漫画家への配慮申入れの報道について



埼玉県警察が、同人漫画作品に登場する手口を模倣した性犯罪行為があったとされることを理由に、作者に対して作品内容の自粛などを求めたと報道されている件、報道後、県警にはメディアや議員等からの問い合わせが相次いでいますが、漫画家への働きかを行ったのかどうかを含め、県警は回答を差し控えるとしています。

 この問題について、メディア法の専門家である京都大学の曽我部真裕 教授からコメントを頂きましたので、ご紹介いたします。

(撮影:永山薫

 

曽我部真裕 教授のコメント

警察が表現物の内容を問題視して要請を行った例としては、200911月頃に暴力団を美化・擁護するような書籍、雑誌等が青少年に対して暴力団に対する誤った憧れを抱かせる等の悪影響を与えるとしてコンビニ各社に撤去要請を行った事案が知られている。この件は訴訟になり、福岡高裁は2013329日、強制の要素がなかったことなどを理由に違法ではないとしている。
たしかに、一般論として、警察が犯罪予防等の使命の達成のために企業や市民に対して任意の協力要請を行うことは認められている。コンビニの例で言えば、地域防犯のために様々な協力を行っているのは周知のとおりである。
しかし、こうした手法は透明性や基準の明確性に欠けるところがあり、こと表現の自由に関してこうした申し入れをすることには慎重であるべきだろう。少なくとも、こうした申し入れをした際には必ず詳細な事案や理由を公表し、外部からの検証が可能であるようにしておく必要がある。