2019年5月19日日曜日

2019年5月3日金曜日

『MANGAの自由 平成から令和へ』


平成時代のマンガ規制論争を振り返るインタビュー集『MANGAの自由 平成から令和へ』が、5月12開催「COMITIA128に出ます。
マンガ論争編集長:永山薫の他、前参院議員:山田太郎、AFEE編集長:坂井崇俊、うぐいすリボン理事:荻野幸太郎が結集。
 漫画家の竹宮惠子先生や赤松健先生を始め、平成のマンガ・アニメ・ゲーム等 (MANGA) 規制論争の歴史を知る人々に取材をさせて頂きました!

 表紙は何と竹宮惠子先生の「継がれゆく星」(『地球へ…』)より!

(表紙イラスト/竹宮惠子「継がれゆく星」より デザイン/山田久美子)


COMITIA128 (2019年5月12日) では1000円で販売します!
「ひ35b, AFEE」又は「マンガ論争特設ブース」でお求めください!


MANGAの自由 平成から令和へ』 

 (発行:表現規制史出版会)

MANGA表現の自由を守る闘いに終わりはない
彼らはどう戦い、何を勝ち取ってきたのか?
その歴史と未来を12人に訊いた!

目 次


■マンガ『令和元年のディストピア』/りーるー

■イマココにある歴史と未来/編集部

■巻頭ロングインタビュー

 竹宮惠子 (漫画家/日本マンガ学会会長) を囲んで
 「日本で漫画が発展した理由はコミュニティがあるからなんですよ」

11 人インタビュー

 赤松健 (漫画家) に訊く
 【創作表現規制問題】と【著作権強化による表現規制問題】
 「できれば漫画家主体で出版社と共同でプラットフォーム作ってくっていうのが、望ましい」

 水戸泉 (作家) に訊く
 【民間による規制問題】
 「そんな自主規制おかしいよ! 学園ものBL を取り戻した日」

 藤本由香里 (明治大学教授) に訊く
 【創作表現規制問題】
 「実在児童を守るということには、もちろん賛成だし、そこにこそ力を尽くしていきたい」

 伊藤剛 (東京工芸大学教授) に訊く
 【国連等からの外圧による表現規制問題】
 「内面を描くことと性を描くことというのは、思われている以上に密接な結び付きがある」

 山口貴士 (弁護士) に訊く
 【創作表現規制問題】と【著作権強化による表現規制問題】
 「昨今の海賊版対策に対して違和感があるのは自分たちでできることをやっているのかってことなんですよ」

 兼光ダニエル真 (翻訳家) に訊く
 【創作表現規制問題】と【国連等からの外圧による表現規制問題】
 「あなたの正義を伝えたいならば、既存の枠組みを勉強しましょう」

 山田久美子 (デザイナー/女子現代メディア文化研究会代表) に訊く
 【国連等からの外圧による表現規制問題】と【著作権強化による表現規制問題】
 「デザインも法律を作るプロセスも似ている。手法に固執していてはダメ。捨てる勇気も必要です」

 坂井崇俊 (AFEE編集長) に訊く
 【民間による規制問題】
 「どういう立場で文句を言えるかと言ったら、それは消費者しかないんですよ」

 廣田恵介 (ライター) に訊く
 【創作表現規制問題】
 「僕らは子どもの頃から、戦ってもムダだという教育ばかりを受けている」

 城所岩生 (GLOCOM客員教授) に訊く
 【著作権強化による表現規制問題】
 「柔軟な制限規定は開発のためにのみ限られています。これでは日本版フェアユースには程遠い」

 山田太郎 (前参議院議員) に訊く
 【結びに替えて】



(61ページに引用しているチラシの説明文に、イラストの著者を開田先生と紹介した記述がありますが誤りでした。お詫びして訂正いたします。)

2019年4月4日木曜日

児童ポルノ選択議定書ガイドライン草案に対するCBLDFからのコメント(仮訳)

 国連児童権利委員会が、2019年2月~3月にかけてパブリックコメントを募集した「児童ポルノ選択議定書の実施に関するガイドライン草案」について、米国コミック弁護基金(CBLDF)が提出したコメントの仮訳を以下に掲載します。(英語の本文はこちらです)



2019年3月29日

OPSCの実施に関するガイドライン草案へのコメント

児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書(OPSC)の実施に関するガイドラインの草案について、我々にコメントを提供する機会を与えて下さりありがとうございます。

Comic Book Legal Defense FundCBLDF)は、コミックメディアと、それを使用するクリエイター、小売業者、配給業者、出版社、司書、教育者、および読者のコミュニティの、合衆国憲法修正第1条に基づく権利について擁護することを目的としたアメリカの非営利団体です。

私たちは、子どもたちを搾取や虐待から守るためのあらゆる努力を称賛します。このガイドライン草案には、これらの目標を達成するのに役立つ可能性がある多くの側面があります。しかしながら残念なことに、このガイドライン草案には別の側面があり、私たちの懸念する方法によって、創作表現と犯罪行為とが混同されてしまっています。

61項では、児童ポルノの定義に、「絵や漫画」、「デジタルメディアの表現」、「印刷物またはオンラインで書かれた資料」などの表現内容が含まれると主張しています。 この主張は、合衆国最高裁判所が、New York 対 Ferber 判決において、児童ポルノを規制する政府の理論的根拠は、特に虐待記録を一掃し、そのような虐待記録を市場から根絶することによって、実際の子供を保護する点にあると述べたこととは対照的です。同じく合衆国最高裁は、Ashcroft 対 Free Speech Coalition において、児童ポルノの定義は絵や漫画などの創作的な画像には及ばないとの判決を下しています。政府にとっての切実な関心事は、実際の未成年者を虐待から保護することであって、創作表現を犯罪化することではないのです。

62項では、「締約国に対して、あらゆる形態の児童の性的虐待の素材を法律で禁止することを要請する」としています。CBLDFが弁護支援を行ったカナダでの訴訟 R.対 Matheson では、犯罪歴のない25歳のアメリカ市民が、誤って児童ポルノと定義されてしまった創作物のアート作品とともにカナダに入国したとして、起訴されました。事件が裁判所で解決するまでの2年間、彼は仕事や教育のためにインターネットを使うという権利すらも失いました。最終的に起訴は取下げられましたが、それはマセソンが訴訟費用ための数万ドルの借金を抱えてしまった後のことでした。U.S.対 Handley 事件では、政府は、わいせつな児童ポルノであると主張して、創作物のコンテンツを所持していた39歳の退役軍人であるクリストファー・ハンドリーを起訴しました。ハンドリーは裁判で争うことなく司法取引に応じました。彼には犯罪歴はなく、いかなる種類の実際の実写ポルノも持っていませんでした。判決文において、政府は、アダルト・コミック本の単なる所持が、刑務所での心理的治療と監視を続けることを必要とする「性的逸脱」の一類型に該当すると主張しました。これらの訴追は、実際の未成年者を保護するという結果にはなりませんでした、その代わりに、創作物のコンテンツの所持を理由に、コミュニティに脅威を与えない個人を罰したのです。

 パラグラフ63は、"委員会は、「疑似的な性的行為」には、オンライン・オフラインを問わず、現実または擬似的に露骨な性的行為に従事する子どもと見受けられるあらゆる人物の描写もしくはその他の方法によって表現したもの、および性的に露骨な活動に従事する子どもの写実的ないしはバーチャルな描写を含む、と解釈すべきであるとの見解である。そのような描写は子どもを性の対象として見ることを常態化することを促し、子どもの性的虐待物の需要を促進する。" と述べています。最後の一文の主張には論拠の欠如があります。創作コンテンツは現実ではありません。創作コンテンツでは、セクシュアリティ、暴力、犯罪行為に関するタブーが常に探求されてきました。近年の創作コンテンツをめぐる歴史においては、この委員会で採用されたのと同じメディア効果論の議論と関連したモラルパニックの周期が見られます。歴史的に、そのようなメディア効果の議論は疑わしいことが示されてきました。アメリカでは1950年代になると、少年非行の原因として漫画本が調査対象となり、メディア・コンテンツを揺るがすようなモラルパニックのプロモートが行われた結果、読者が大幅に減り、数千人のクリエイティブな専門家が仕事を失うことになりました。政府の最終報告とその後の学術的調査は、そのような関連性がないことを証明しましたが、それは弊害が出る前ではありませんでした。ごく最近では、社会における暴力の常態化と永続化に因果的な影響があるものとして、ビデオゲームが位置づけられています。ブラウン対EMAでは、合衆国最高裁判所は暴力的なビデオゲームを規制しようとする法律を無効にし、憲法違反であると判断しました。この事件では、社会科学研究を含むメディア効果仮説が裁判所に持ち込まれました。裁判所は、それらの研究について、因果関係ではなく相関関係のみを示すことを目的としたものであり、「せいぜい」彼らは「暴力的エンタテイメントへの接触と、非常に小さな現実世界への影響との間に、ある程度の相関関係」を示しただけであると認定しました。現実の人生の厄介な側面を描こうとするメディアの存在について、それらの否定的な実生活の行動を促進したり常態化したりするものであると提示してしまうことは、危険かつ不正確です。

ここまでの段落で説明したような方法による創作コンテンツの訴追は、最終的に、実際の被害者の保護から、いかなる児童虐待も犯していない創作コンテンツの読者や配給者の訴追へと転用されることでしょう。

以上のような懸念をかえりみず、児童ポルノの定義と訴追対象を、創作物の芸術作品や文章を含むものに拡大することは、非常に広い合法的な言論空間をも危険にさらします。ヤングアダルト向けフィクションは、セクシュアリティを日常的に取り扱っています。なぜなら、それはヤングアダルトの読者たちにとっての今の関心事であるからです。虐待サバイバーによる回顧録は、癒しのプロセスの一側面として、虐待の情景の詳細をしばしば描写して説明します。芸術と写真の主流作品は、未成年者が描かれた作品を含むヌードが探求され、描かれ、そして記述されてきた、一連の美術史の中に存在します。これらの合法的に探求されてきた分野のすべてが、本ガイドライン草案に含まれる政府への検閲の要請と、提案される法律が採用された場合に生じるだろう萎縮的効果による自己検閲によって、危険にさらされることになるのです。

児童権利委員会と世界中の政府が、児童の性的虐待を抑制するための行動をとっていることは称賛に値します。いかなる場合も、私たちの努力は、自由な表現を制限することではなく、本当の子供を守ることに向けられなければなりません。

これらのコメントをご検討いただきありがとうございます。


敬具

チャールズ・ブラウンスタイン
事務局長

2019年3月2日土曜日

「このような法がどれほど間違っているかの生ける証拠」シモン・ルンドストロームからの手紙

To
the Humans Rights Office of the United Nations,

from
Simon Lundström
civilian, Sweden

Dear Sirs/Madams,

It came to my knowledge that you are preparing guidelines on the implementation of the Optional Protocol to the Convention on the Rights of the Child on the sale of children, child prostitution and child pornography.

As a long time admirer of the comics medium, much of which is aimed at teenagers, I have serious concerns on two specific details in this document: Paragraphs 56 61 and 58 63.

Paragraph 56 61 reads:
Child pornography is defined in article 2 OPSC as “any representation of a child engaged in real or simulated explicit sexual activities, regardless of the means used, or any representation of the sexual parts of a child for primarily sexual purposes”. (emphasis mine)

Furthermore, it reads:
The qualification “by whatever means” reflects the broad range of material available in a variety of media, online and offline. It includes, inter alia: visual material such as photographs, movies, drawings and cartoons; audio representations; any digital media representation; live performances; written materials in print or online; and physical objects such as sculptures, toys, or ornaments. (emphasis mine)

While I, as would anyone sane, agree with you in that the using of real children in pornographic materials must and should be punished by the law's full extent, including utter fiction, such as "drawings, cartoons, written materials, sculptures, toys or ornaments" is not only highly unrecommendable, it also contradicts the Human Rights Freedom of Expression, and will cause unnecessary damage, fear and self-censorship that will not help any children. I realize your fervent wish to stop child pornography, and it is highly formidable of you to do so, but you are risking to throw out the baby with the bathwater:

First and foremost, this would illegalize any doll or toy that has genitals, which surely must not be the purpose of this suggestion. Furthermore, the definition of children is in some countries any age below 18 or 16, sometimes 15. That fiction aimed at, and/or by individuals of this age – teenagers – needs to address sex, and growing sexuality and sexual acts, needs not to be said – it is the everyday life of any teenager. The above regulation would make many teen novels, in fact any book that describes sexual acts of people of 15 years of age, illegal material. Not to mention countless statues and ornaments, and a mass of comic books. Again, this can surely not be the purpose of this suggestion.

The spreading of real photos of movies is one thing –that can seriously harm the individuals in question. However, the above suggestions explicitly criminalizes fiction – the mere writing, or drawing of imagined characters, as long as "someone" could consider the ficticious characters as underage. This is highly dangerous, as it ventures deep into Thought Police territory, and specifically as "cartoons" are highly iconized and exaggerated, and little can be surely said of any age specifics. Not only will this cause an unnecessary and hampering self-censorship on literature in books and comics, it will also needlessly draw funds from the legislative forces, to spend time and money criminalizing books and drawings, something that will scarcely help children that are actually abused.

It also goes directly against what paragrah 60 65 and 61 66 proposes, to start instead using the term “use of children in pornographic performances and materials”, “child sexual abuse material” and/or “child sexual exploitation material”. Reasonably, cartoon characters are not real children, and we cannot have laws that forbid abuses of the mere concept of a child – that would bring us back to the Middle Ages and blasphemy laws.

Paragraph 58 63 states:
The Committee is of the view that “simulated explicit sexual activities” should be interpreted as including any material, online or offline, that depicts or otherwise represents any person appearing to be a child engaged in real or simulated sexually explicit conduct and realistic and/or virtual depictions of a child engaged in sexually explicit conduct. Such depictions contribute to normalising the sexualisation of children and fuels the demand of child sexual abuse material.

This is merely not true, and I do not think it's recommendable for the United Nations to base a suggestion on unfounded claims. There is murder in fiction, in all books, films and games, and has been since the day the medium was born, yet murder has not been normalized. There is unfounded and gratitious violence in fiction: books, films and even interactive games, yet violence has not been normalized. There has been gratified rape sex in pornography since the day the video was born, but violence and sex has not been normalized. There is a huge chasm between fiction – mere concepts – and reality. The existence of drawings of teens or children having sex will not spawn pedophiles, just as violence in games or comic books did not spawn criminals.

It is very commendable that work is done to by any means stop children from being abused in any way. However, it is equally necessary to be careful so as to not shoot oneself in the foot. Needlessly prohibiting what people can write books and comics about will not help, and funds and manpower must be directed towards the real crimes, and not against cartoons, sculptures, and drawings.

One might think that there is no "need" for such things as cartoons depicting children in sexual situations, hence there is no harm in forbidding it. However, this is wrong, in two ways. First of all, there is a natural need – books and comics for teenagers and children must be able to handle the concepts of sex. They already do – countless books, and countless comics from Japan, which are all very popular in Europe and around the world these days. Forbidding these would not only not help children who are abused, but would cost immense resources, and achieve nothing. In these modern times, further traumatizing nakedness and sex by not even allowing it in fiction, just in the age where children mature to sexuality, will not help, but will cause damage. Secondly, whether or not there is a "need" for a specific literature should never be the point of entry – the point of entry should be whether it causes immense damage or not. In this case, there is not.

Mayhaps anyone who reads this wonders why I feel for this so strongly. This is, of course, because I am an avid reader of books and comics, and because I see the huge value in literature's ability and freedom to experiment, to joke, to jeer and jest, to ridicule and explore. Comic books exaggerate, and extrapolate, both violence, feelings, heroics and sex. As a representative of fans of Japanese comic books, I for one know more than many, how important this is and was for a teenager, to read about these feelings that I knew little of. To hear that the UN would want to prohibit things such as someone writing about, or drawing about, teenage sexual situation is extremely worrying. Not only does it testify thoughtlessness, and a vast ignorance on how important literature is, but it also signifies a failure to understand the weight of the freedom of speech, and how important it is to actually allow expressions and utterances that are highly unwanted – as long as they do not threaten the freedom of others. And in this case, they don't. We do not wish rape or murder or robbery in society, yet we allow it in fiction, simply because we know that fiction and reality are two very different things.

That the UN would sign the claim that cartoon depictions of underage sex would "fuel the demand for child sexual abuse material", is also deeply worrisome. This is an unfounded claim, commonly used by individuals that are mostly referred to as "morally hysterics", and should not be the basis of legislature. This is highly reminiscient of the 1800s claim that reading of books would criminalize youth, the 1940s claims that comic books would criminalize youth, the 1980s claims that home video would criminalize youth, or the 1990s claims that video games would criminalize youth. As we have seen, it does not. The existance of a highly unwanted concept in fiction, does not change society.

I am a living proof of how wrong this law can strike – as a comic books researcher, I have thousands of books and millions of drawings in my possession. I was accused of possession of what is nothing but ink on paper. Though I was eventually rightfully finally freed of charges, several years of funds and manpower were conducted into trying to determine whether the ficticious characters in the 39 comic book drawings where underage or not – funds and manpower that could have been directed to something that would have helped children in need. This only because the law failed to acknowledge that cartoon characters are not real. My own time and suffering does not matter in this issue – what was devastating was that the police and lawyers had to devote time to what was essentially a completely unnecessary farce.

It is my sincere hope, that you at the UN realize that over-extrapolating can be harmful, and that you focus your forces on those who cause harm to and abuse children, and that you avoid causing more harm by limitting literature and fiction based on an unfounded fear.

Yours truly,
Simon Lundström
Sweden




【仮訳】

国際連合人権高等弁務官事務所 御中

シモン・ルンドストローム
民間人、スウェーデン

Sirs / Madams

私は、皆様が、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の実施に関するガイドラインを作成していることを知りました。

長きにわたって10代の若者たちを主な対象とするマンガを崇拝してきた者として、私はこの文書の2カ所の部分について深刻な懸念を抱いています。パラグラフ56 6158 63についてです。

パラグラフ56 61には、こうあります。
児童ポルノとは、OPSC2条で、「用いられる手段の如何を問わず、実際のまたは擬似の露骨な性的行為に従事する児童のあらゆる表現、もしくは主に性的目的のための児童の性的部位のあらゆる表現」と定義されています。(文字強調は筆者による)

さらに、そこにはこうもあります。
「用いられる手段の如何を問わず」とは、オンラインとオフラインを問わず、さまざまなメディアで使用可能なさまざまな素材を反映してのものです。そこには、とりわけ、写真、映画、絵、漫画などの視覚資料が含まれます。音声表現や、あらゆるデジタルメディア表現、ライブパフォーマンス、印刷またはオンラインで書かれた文章彫刻、おもちゃ、装飾品などの物体も含みます。(文字強調は筆者による)

私は、まともな人なら誰でもそうであるように、ポルノの素材として本物の子供を使用することが法律によって罰せられなければならない・罰するべきであるという点で、皆さんに完全に同意します。しかし、全くのフィクショナルな表現である「絵、漫画、書物、彫刻、玩具、装飾品」のようなものまでをこれに含むことは、絶対にお勧めできません。そればかりか、誰一人として子どもたちを救うことがない措置であるにも関わらず、表現の自由という人権との間で矛盾を生じさせて、不必要なダメージを与え、不安と自己検閲を引き起こすことになります。私は皆さんのその熱心さが、児童ポルノを止めたいとの願いからであることを理解します。児童ポルノを止めることは大変な難題でありますが、皆さんはそれを成し遂げようとしています。しかし、皆さんは、その大切な願いを台無しにしてしまうリスクを冒しているのです。

まず第一に、これは性器のある人形やおもちゃを違法にするでしょう、それはこの提案の本来の目的ではないはずです。さらに、子供の定義はいくつかの国では18才または16才未満、時には15才以下です。この年代の個人、つまりティーンエイジャーを対象とするフィクションは、セックス、セクシュアリティに関しての成長や、性的体験といったテーマに取り組む必要があります。言うまでもなく、それは、あらゆるティーンエイジャーの日常生活についてのことです。上記の規制は、多くのティーンエイジャー向けの小説、例えば15歳の青少年の性的行為について記述したいかなる本をも、違法化してしまうことになるでしょう。無数の彫像や装飾品、そして多くの漫画本の束については言うまでもありません。繰り返しますが、このようなことがこの提案の目的であってはならないはずです。

実際の映像が拡散されてしまうことは、撮影された個人に深刻な被害を及ぼす可能性があるでしょう。しかし、上記の提案は、「誰か」が架空の人物を未成年者とみなすことができる限り、フィクション - 単なる執筆、または想像上の人物の描写 - を明示的に犯罪としてしまうものです。これは思想警察の領域に深く入り込むものであり、非常に危険です。特に「漫画」は高度に象徴化され誇張されているため、年齢についてはっきりさせることは、ほとんどできません。これは、本・漫画の人文的表現への不必要な妨げとなる自己検閲を引き起こすだけでなく、本や図面の犯罪化のための立法に不要な時間と資金を浪費することとなる一方で、実際に虐待されている子供たちをほとんど助けることはないでしょう。

それはまた、これまでの用語に替わり、“use of children in pornographic performances and materials, child sexual abuse material” あるいは “child sexual exploitation material”といった用語を使用するよう改めていくべきとのパラグラフ60 6561 66の提案とも直接に反するものです。これは理にかなった話であり、漫画のキャラクターは本当の子供ではありません。そして、私たちは、子どもについての単なる概念を虐待することを禁じるような法律を持つことはできません - そのような立法は、中世の冒涜罪があった時代にまで、私たちを連れ戻すことでしょう。

パラグラフ58 63は、次のように述べています。
委員会は、「疑似的な性的行為」には、オンライン・オフラインを問わず、現実または擬似的に露骨な性的行為に従事する子どもと見受けられるあらゆる人物の描写もしくはその他の方法によって表現したもの、および性的に露骨な活動に従事する子どもの写実的ないしはバーチャルな描写を含む、と解釈すべきであるとの見解である。そのような描写は子どもを性の対象として見ることを常態化することを促し、子どもの性的虐待物の需要を促進する。

これは端的に言って事実ではありません。そして私は、根拠のない主張に基づく提案をすることが、国連として望ましいことであるとは思いません。本や映画やゲームといったフィクションの中では殺人が起こり、メディアが誕生した日以来、ずっと続いていますが、殺人は未だ常態化されてはいません。本、映画、さらにはインタラクティブゲームでも、フィクションには理由のない酷い暴力がありますが、それでも暴力は常態化されていません。ビデオが誕生した日以来、ポルノ作品にはレイプセックスのシチュエーションが登場しましたが、暴力をともなうセックスは常態化されていません。単なる概念と現実の間には大きな隔たりがあります。 ゲームや漫画本の暴力が犯罪者を生み出さなかったのと同様に、セックスをしている10代や子供の絵の存在は、小児性愛者を生み出すことはありません。

子どもたちがいかなる方法によっても虐待されるのを防ぐため、何かしなければと活動をされていることについては、非常に称賛に値することだと思います。しかしながら、本来の目的から逸れて墓穴を掘るようなことをしないように注意することも大切です。不必要に人々が本や漫画を書くことを禁止することは、役に立ちません。資金や人的資源は、漫画、彫刻、そして絵に対してではなく、本当の犯罪に向けられなければなりません。

子どもたちの性的な場面を描いたマンガなど「必要」がないと考える方もいらっしゃるかもしれません、そして、必要がないから、それを禁じることにも弊害はないのだ、と。しかし、これは2つの点で間違っています。まず第一に、必要性は当然にあります - ティーンエイジャーと子供のための本と漫画は、セックスの概念について取組むことができなければなりません。そして、それは既に行われています。- 無数の本、そして日本からの数え切れないほどの漫画、これらは今日、ヨーロッパや世界中で非常に人気があります。これらを禁じることは、虐待されている子供たちを助けないだけでなく、膨大な資金を必要とし、そして何も成し遂げないことでしょう。現代において、子どもがセクシュアリティを成熟させる時期に、フィクションですらそれを許さないことで身体と性についての記憶をトラウマ化させることは、子どもたちの助けになどならず、むしろ子どもたちを傷付けることになります。第二に、特定の文献に対する「必要性」があるかどうかは、決して規制の議論の入口にすべきではありません - 議論の入口は、それが莫大な損害を引き起こすかどうかであるべきです。この場合、そのような損害はありません。

この文章を読まれた方は誰もが、なぜ私がこのような問題について思いを強くするのか、疑問に思うかもしれません。それは、もちろん、私が本や漫画の熱心な読者であるから、そして文学の力と、実験をしたり・冗談を言ったり・風刺をしたり・嘲笑をしたり・探求をしたりといった自由に、大きな価値があると考えているからです。マンガ本は、暴力や感情、英雄的事柄やセックスを誇張して、人々の想像力をかきたてます。そのことの大切さ、私がほとんど知らなかったこれらの感情を読めることが、ティーンエージャーにとってどれほど大切なことであるかを、私は日本のマンガを愛する者の一人としてよく知っています。国連が、10代の性的状況を書いたり描いたりすることを禁止することを望んでいると聞くのは、非常に心配なことです。それは思慮深さや文学の重要性についての大きな無知を証明するだけでなく、言論の自由の重みを理解することの失敗を意味しています。そして実際には、とても望ましくない表現や発言であっても許可するということが、いかに重要かを意味しています。他人の自由を脅かさない限りにおいては、です。そしてこの場合、そうではありません。私たちは現実社会での強姦や殺人、強盗を望んでいませんが、フィクションと現実が2つの非常に異なるものであることを知っているからです。

マンガにおける未成年者の性の描写が、「子どもの性的虐待物の需要を促進する」という主張を国連が裏書きするであろうということも、また非常に心配です。これは根拠のない主張であり、一般に「道徳的ヒステリア」と呼ばれる人々によって唱えられているものであり、立法の根拠となるべきものではありません。これは、本を読むことが若者を犯罪に走らせるという1800年代の主張、コミックが若者を犯罪に走らせるという1940年代の主張、あるいはビデオゲームが若者を犯罪に走らせるという1990年代の主張を彷彿とさせます。私たちが見てきたように、そうではありません。フィクションに登場する非常に望ましくない概念の存在が、社会を変えてしまうことはありません。

私は、このような法がどれほど間違ったことを引き起こす可能性があるかの、生きた証拠です。漫画本の研究者として、私は何千もの本と何百万もの絵を持っています。私は、紙の上のインクに他ならないものを所持していたことを理由に訴追されました。結局、私は有罪になることはなく解放されましたが、39枚に及ぶマンガの絵の中の架空の人物が未成年者かどうかを判断するために、数年間にわたって資金と人的資源が費やされました。それらの資金と人的資源は、困っている子供たちを助けるために直接投入することだってできたはずのものでした。こんなことになってしまったのは、法律の条文が漫画のキャラクターが本物の子どもでないことを認識していなかったからです。私自身の時間と苦しみはこの問題には関係ありません - 壊滅的だったのは、警察と弁護士が、本当なら全く不要だった茶番に時間を費やさなければならなかったということでした。

国連の皆さんには、過剰包含が有害である可能性があることを認識してほしいと思います。そして、ご自分の力を子供たちに危害を加え虐待する人々への対策に集中させ、根拠のない恐れに基づいて文学とフィクションを規制することによってより多くの危害を引き起こすことを避けてほしいと思います。それが、私の心からの希望です。

敬具
シモン・ルンドストローム
スウェーデン





シモン・ルンドストロームさん

 1973年生まれ。翻訳家として日本の漫画・アニメ作品を数多くスウェーデンに紹介してきた。代表的な翻訳作品に、『鋼の錬金術師』『ワンピース』『NARUTO』『名探偵コナン』『らんま1/2』など。2010年に漫画の画像を所持していたことを理由に児童ポルノ所持罪で起訴されるが、2012年にスウェーデン最高裁判所において、所持していた漫画絵は写実的とまでは言えず表現の自由と比較衡量すると児童ポルノとみなすことはできないとの合憲限定解釈等により、無罪となった。

■ スウェーデン最高裁 漫画絵所持無罪事件

■ 翻訳家シモン・ルンドストロームさん講演会

2019年2月8日金曜日

違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会

違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会

場所:参議院議員会館 101会議室
日時:平成31年2月8日(金) 午後2時から

登壇者(写真左から):
 赤松 健さん (マンガ家)
 竹宮 惠子さん (マンガ家/日本マンガ学会会長)
 藤本 由香里さん (編集者/明治大学教授)
 大屋 雄裕さん (法学者/慶應義塾大学教授)


内容:  今国会での提出が予想される著作権法改正案。「違法ダウンロードの対象を違法アップロードされた著作物全体に拡大する」という方針に関しては、「一般国民を巻き込む危険が大きすぎるのではないか」「インターネット利用やいわゆる二次創作活動の萎縮を招くのではないか」等の危惧が指摘されており、法制小委員会でも意見が分かれました。  本集会では、様々な立場からの意見を伺いつつ、改正方針の何が問題とされているのか、規制範囲に適切な制限を設けるとすればそれはどういうものなのか等を論じました。

事務局:コンテンツ文化研究会、うぐいすリボン


配布資料:

■ 日本マンガ学会理事会「ダウンロード違法化の対象範囲拡大に対する反対声明

■ 大屋雄裕教授講演「ダウンロード違法化 拡大の論点解説

■ 山田奨治教授より「違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会」へのメッセージ

■ 前田健准教授(文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会委員)のレジュメ「ダウンロード違法化の対象範囲の見直しの論点」

■ 八田真行准教授(MIAU理事)からのメッセージ

■ 情報法制研究所(JILIS)「ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言」


レポート記事:


「意味のない法改正」「イラスト界が壊滅する」 違法ダウンロード対象拡大で漫画家らが“反対集会”  2019年2月8日 IT media

■ 実効性のない法律に意味はあるのか?「違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会」レポートと考察  2019年2月9日 HON.jp

■ 問題だらけの違法ダウンロード拡大、漫画家からも悲痛の叫び。参議院議員会館にて開催された院内集会レポ  2019年2月9日 すまほん!!

■ 違法ダウンロード範囲拡大は誰がために―「違法ダウンロード範囲拡大を考える院内集会」レポート  2019年2月12日 マンガ論争


当日取材報道:

■ 違法ダウンロードの対象拡大 漫画家らが反対集会  2019年2月8日 NHK ■ 違法ダウンロード対象拡大に漫画家ら反対 国会内で集会  2019年2月8日 共同通信
■ 海賊版DLの違法化、漫画家も反対「ちょっと行き過ぎ」
 2019年2月10日 朝日新聞


関連報道: ■ 画像や文書も…ダウンロード違法化、対象拡大?   2019年1月23日 読売新聞 ■ 海賊版DL規制、被害者の漫画家まで批判 拙速な文化庁   2019年1月25日 朝日新聞 ■ 「スクショ」違法に? DL違法化の拡大方針まとまらず   2019年1月25日 朝日新聞 ■ 静止画ダウンロード違法化に反対声明 日本マンガ学会   2019年1月25日 産経新聞

社説:
■ ダウンロード 罰則拡大は萎縮を生む
  2019年1月30日 京都新聞
■ 海賊版対策 過剰な規制が生む弊害   2019年2月10日 朝日新聞
■ ダウンロード規制拡大 ネットの自由、狭めぬよう
  2019年2月11日 毎日新聞

国の資料:
■ 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会報告書の公表について
  2019年2月5日 文化庁

 著作権法改正案の提出見送りに至る経緯
  立法と調査 411号(平成31年4月15日)

2019年1月20日日曜日

講演会:ダウンロード違法化拡大の論点解説

 2019年1月20日に開催した講演会「ダウンロード違法化拡大の論点解説」にお越し下さった皆様、ありがとうございました。

演題:ダウンロード違法化拡大の論点解説
日時:2019年1月20日(日) 19時~20時30分
場所:あうるすぽっと (東池袋) 会議室B
講師:大屋雄裕さん (法哲学者/慶応大学教授)


内容:
 著作権法の改正に向けて、「文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会」の「中間まとめ」が出ました。
 ダウンロード違法化の拡大を始めとする、さらなる著作権の強化と処罰範囲の拡大については、不安の声もあがっています。
 本講演会では、情報法政策にも詳しい法哲学者の大屋雄裕先生(慶応大学教授)をお招きして、今回の著作権法改正問題を法理学の観点から解説して頂きました。

■ レジュメ
■ スライド
■ 講演抄録

主催:コンテンツ文化研究会うぐいすリボン

報道:朝日新聞
 【海賊版利用、「一刀両断」に批判 ネット上のすべて違法化、「議論拙速」】




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2018年11月1日木曜日

署名キャンペーン:「静止画ダウンロード」の違法化を行わないで下さい

【2018年12月追記】

 文化庁の パブリックコメントが始まりましたので、今後はそちらへの意見送付をお願いいたします。
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の実施について



海賊版対策として、既に処罰化された映画・音楽に続いて、静止画のダウンロードについても違法化・処罰化が検討されています。
ストリーミングで配信されることが通常の海賊版マンガには何の効果もない一方で、インターネットを使って情報を気軽にスクラップすることができなくなるなど、多大な副作用のある立法であり注意が必要です。(検討対象の「静止画」には、「記事」の画像が幅広く含まれているようです)

そこで、署名サイト「Change.org」 にて下記の署名キャンペーンを始めました。
関心のある方は、ぜひ拡散をお願いいたします。



内閣府知的財産戦略推進事務局 御中

 現在、政府の一部において、「違法にアップロードされた静止画をそれと知りながらダウンロードする行為」を違法化することが検討されています。
 このような法改正が行われれば、人々は、インターネット上の情報を後で確認・検証するためにダウンロードして保存することを躊躇せざるを得なくなります。
 そうなれば、情報流通の自由やインターネットの利便性は損なわれ、インターネット上でどのような表現活動が行われたかの史的資料の保存も難しくなり、人々の知る権利は大きく制限されることになるでしょう。
 そのような事態を招かないよう、静止画ダウンロードの違法化は行わないで下さい。



参考資料(随時追加更新):
朝日新聞2018年10月30日
コラム:山田奨治 (情報学者/国際日本文化研究センター教授)