2021年4月28日水曜日

2021年改正 プロバイダ責任制限法 解説講演会

(5月23日 Youtubeにて公開予定)

 プロバイダ責任制限法の2021年の大幅改正について、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員でもあった上沼紫野さん(日本国及びニューヨーク州弁護士)に、その趣旨と今後の課題の解説をしていただきます。



主催:うぐいすリボン

後援:

2021年3月4日木曜日

志田陽子さん × 亀石倫子さん

『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』
 日本語版 発行記念対談 第3回 志田陽子 × 亀石倫子

 2020年8月にNPOうぐいすリボン出版局から『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』日本語版を発行したことを記念しまして、監修・監訳を務めた志田陽子さん(憲法学者/武蔵野美術大学教授)と、芸術の自由に関係する各分野の専門家との対談企画を実施します。
 第3回目のゲストは、風営法ダンス営業事件や、タトゥー彫師医師法事件で知られる、弁護士の亀石倫子さんです。

2021年1月23日 ZOOMにて実施
司会:荻野幸太郎 (NPOうぐいすリボン)


2021年2月2日火曜日

一部仮訳:ヘンゼルとグレーテル事件 ケベック州上級裁判所判決

 ホラー小説「ヘンゼルとグレーテル」が児童ポルノ犯罪に問われた事件で、2020年9月24日にケベック州上級裁判所は、カナダ刑法の児童ポルノ条項の一部を違憲無効と判断をして、無罪判決を言い渡しました。推奨・教唆をしない文章を児童ポルノ犯罪とすることは表現の自由を侵害すること、また、そのような理由で小説家が児童ポルノ犯罪者として法的・社会的制裁を受けることが適正手続保障の権利を侵害することなどが理由して挙げられました。

 この判決の後、検察側は、個別事件の無罪判断については受け入れた上で、法令違憲の判断についてのみをカナダ連邦最高裁判所に上告して争うという判断をしました。

 事件の事実関係に関心のある方からのお問い合わせが多かったため、判決の事実認定と結論部分の仮訳を公開します。法的判断の要旨については、こちらの解説記事をご覧ください。

 



2020 QCCS 2967

ケベック州上級裁判所 2020924日 判決

リシュリュー区 マーク・アンドレ・ブランシャール裁判官

 

[1] 被告人Yvan Godboutは、刑法163.1 (2)項に反し、2016111日から2019219日にかけて、児童ポルノに該当するコンテンツを製造したとして、直接起訴状により起訴された。被告人は、刑法163.1(1)c)号、(2) (3) (4)(4.1)項と(6)項が、「カナダ権利と自由の憲章」(以下、憲章)2条が保障する表現の自由の権利、7条が保障する適正手続の権利、11d)項の保障する無罪推定の権利の規定と抵触しており、憲章1条の自由で民主的な社会における必要性の規定に照らしても正当化することができないとして、これらの刑法条文の違憲宣言を求めている。

 

[2]要するに、論点は、女王対Sharpe事件判決をきっかけとして 2005年に議会で改正された刑法条文の違憲性についてである。女王対Sharpe事件判決では、児童ポルノの所持罪が、「憲章」の2条b)項と7条に反する違憲立法であると申し立てられたことについて、最高裁判所は検討を行って合憲との判断をしつつも、過去の判例に基づき、次の二つの場合が児童ポルノ罪の例外になることを認めた。児童ポルノに該当する視覚的表現や文字資料を、個人的な用途のために本人が作成して所持していた場合と、本人自身によって撮影された映像記録が個人的な用途のために所持され、かつ違法な性的行為が撮影されていない場合である。

 

[3] 弁護側は次のように述べている。本件のような刑事訴追は、児童ポルノを推奨も教唆もしていないホラーやフィクションの小説の作家の表現の自由を侵害するものである。憲章 2b)項と7条と11d)項に、正当化できない程に反している上に、起訴された作家に対する深刻かつ致命的な社会的制裁をも伴うものだからである。

 

[4] 弁護側は、刑法163.1(2)項、163.1(3), 163.1(4)項 と 163.1(5)項の量刑の下限が、憲章12条に反して違憲である可能性について、現段階において、その判断を下す必要性がないと同意している。

 

[5] 検察側は、憲章2条b)項との抵触を認めるが、被告人に対する起訴を次のように正当化している。児童ポルノのような表現は、子供という社会で最も弱い存在に対して特に有害であるから、その自由の保障は相対的に判断するべきである。また、検察側は、憲章7条と11d)項との抵触を次の理由で否定している。第一に、弁護側がそれを十分に証明していないからであり、第二に、弁護側に主張責任を課すことは、立証責任の転換には当たらないからである。

 

[6] 以下の理由により、当法廷は、刑法163.1(1)c)号と163.1(6)b) 号には、憲章2条b)項と7条への正当化できない抵触があると判断し、これらの条文を無効にする。

 

1. 事実 8-32

 

[8] 本件の事実認定については、2019年12月5日の判決の事実認定を引き継ぐ。

 

           [7]公訴事実については争いがない点を強調しておく。GodboutADAがそれぞれ小説の著者と発行人であること、ADAが販売者であること、また「ヘンゼルとグレーテル (Hansel et Gretel) 」という小説が表紙から裏表紙まで一貫した作品であることといった事実を、すべて被告人には認めている。

           [8] 証拠品として小説が一冊提出され、Godboutは著者であることを、ADAは発行人・販売者であることを認めた。

           [9]ただし、 Godboutは法廷において、表紙の写真に登場する二人が「生身」の人間であることと、二人が本件小説の登場人物であるジャノーとマルゴーを想定して配役されたものと推認できることを認めた。この点は、Godbout が表紙から裏表紙までを一貫した小説の作品であることを事実として認めた書面(記録と申告)とは反している。

           [10]最低限必要な概要は次のとおりである。250頁以上に及ぶ小説で、ホラーとサイエンスフィクションの物語の中で、様々な肉体的・精神的な性的虐待を受ける兄妹の苦しみを描いている。本には、露骨で衝撃的な部分を含むフィクションであるとの注意書きがある。本法廷は、刑法163.1(1)c)条の定める児童ポルノと認定されうる部分が14箇所 に及ぶと見ている。

 

[9]次の情報を補足する必要がある。第一に、こうした箇所では、父親と息子、娘の間の近親相姦のような性的虐待が描写されているが、加害者の死によって贖罪を得るという構造などによって、その性的虐待を批判することに留まる内容とはなっていない。

 

[10] 第二に、問題の箇所では、子供たちと第三の成人との間での強姦、肛門性交、フェラチオ、クンニリングス、去勢が描かれている。

 

[11] 第三に、こうした箇所は、物語の中で悪魔信仰めいた儀式として位置づけられており、その構図によって、作品の中心的な登場人物たち(二人の子供と、サマエルと、その母親のウルスラ)が性的に搾取される理由が説明されている。

 

[12] 第四に、作品はコストコの複数の倉庫に保管されており、Godbout と出版社のADAがその大量流通を意図していたことは間違いのない事実である。

 

[13] 最終的に、審理のため、検察側・弁護側は証拠品を提出し、以下のような事実を事前に認め合った:

1. 販売目的で作られたPDF版の電子書籍が、最初に配信されたこと(2017年10月20日)。

2. 二番目の電子書籍として、ePub版が配信されたこと(2017年10月23日)。

3. 本がオフラインにされたこと(2018年1月18日)。

4. 本がオフラインであることが確認されたこと(2018年3月8日)。

5. 本が再び市場に出されたこと(2018年4月25日)。

6. 警察の二回目の家宅捜索と刊行本の回収要請の結果、電子書籍が2019年3月14日にオフラインにされたこと。

7. 現在、電子書籍は合法的な方法では入手不可能となっていること。

8. 現時点では、ヨーロッパのサイトを通じて、P-1の品(本のPDF)のオンラインでの閲覧が可能となっているが、無料でのダウンロードは不可能であること。

9. 上記のサイトでのP-1の品のオンライン公開は、ADA出版とGodbout の制御できないことであり、またこの公開が法律に則った形で行われたわけではなく、非合法であること。

 

[14] 当初、検察側・弁護側双方が、刑法 163.1(6)b)号にある「未成年者に対する不当な危険性」という要件に関連して、次の鑑定報告を提出するつもりであった:

1)       検察側の性犯罪の専門家として、ケベック州警察の子供の性的搾取に関するインターネット上の犯罪を取り締まる部署に勤務する犯罪学者 Sarah Paquette氏の鑑定。Paquette氏の鑑定は主に次の二つに側面を分析する。第一に、異常な興味や空想と、性的な危険性との関連性。第二に、性犯罪を可能にさせてしまうような思考に関する認知のリスクとの関係性。

2)       弁護側:性犯罪と再犯のリスク分析を専門とする犯罪学者のフィリップ・ベンシモン(Philippe Bensimon)氏と、物語論の専門家であるミシェル・ヴェイリュー(Michel Veilleux)氏の意見の提出。Bensimon氏の鑑定を提出する目的は、主に性的目的での子供との性行為についての記述が構成要素である文章が存在することと未成年者への危害との間には客観的に検証可能な関連性があるのかと、そのような文章が未成年者との性行為を推奨または教唆しているのかどうかを判断するためである。Veilleux氏の鑑定を提出する目的は、創作において使用されたプロセス、技法と、ストーリーの構造を分析して、ゴッドバウトの作品に性的な興奮を喚起するためのポルノ的装置が含まれているかどうかを判断するためであり、この鑑定はVeilleux氏の物語についての科学である物語論の研究の経験に基づいて行われた。

 

[15] 法廷では、検察側・弁護側の双方が、専門家の報告書を証拠として扱わず、尋問をしないことに合意した。したがって、上記の報告書は、本法廷の判決の判断材料には含まれていない。しかし、検察側・弁護側の双方はVeilleux 氏の報告書の中にあるいわゆる「性愛文学」についての調査を非専門家証拠資料に含めることに同意した。

 

[16]上記の調査は、フランス語文学の中の児童ポルノを含む作品——つまり18歳未満の未成年者との性行為の描写——を対象としていることから分かるように、明らかに網羅的ではない。

 

[17]Veilleuxの編纂した目録は六つのテーマに分かれている:

1)性愛文学:ジョヴァンニ・ボッカッチョの『デカメロン』(13501354 )、ドナスィヤン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド、通称マルキ・ド・サド(1740ー1814)の著作、ニコラ・エドム・レチフ・ド・ラ・ブルトンヌの著作(1798)、ギヨーム・アポリネールの最も有名なポルノグラフィ小説である『一万一千本の鞭 : 太守の色道遍歴』(1907)、ウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』(1955年)、アナイス・ニンの『ヴィーナスの戯れ』(『デルタ・オヴ・ヴィーナス』)(1977年)、エスパルベックの『薬剤師(La Pharmacienne)』(2002年)。ケベックの文学について、フィリップ・ブランション(Philippe Blanchont)の『Après Ski (スキーの後で)』 (1966年)、イヴ・テリオー(Yves Thériault)の『Oeuvre de chair (肉欲の傑作)』(1976年)、シャーロット・ボアジョリ(Charlotte Boisjoli) の『Jacinthe (ジャキント)』 (1990年) 。

2)社会派文学:トニ・モリスンの『青い眼が欲しい』(1995年)、アゴタ・クリストフの『悪童日記』(2011年 )、シルバン・モーニエー(Sylvain Meunier)の『Lovelie d’Haïti』(2003年)ヘザー・オニール(Haether O’Neil)の『Hôtel Lonely Hearts(ロンリー・ハート・ホテル)』(2017年) 。

3)ホラー小説とポラール:『IT-イット-』や『図書館警察』を含むスティーヴン・キングの作品、パトリック・セネカル(Patrick Sénécal)の『タリオンの七日間(Les sept jours du Talion)』(2002年)と『ヘル・ドットコム(Hell.com)』(2009年)、クリスティーヌ・ブルイエット(Chrystine Brouillette)の『それは私の子供をもっと愛するため(c'estt pour mieux t’aimer mon enfant)』(1996年)、アンヌ・エベール(Anne Hébert)の『サバトの子供たち(Les Enfants du Sabbat)』(1975年)とアラン・ロベ・グリエ(Alain Robbe-Grillet)の『センチメンタル小説(Un Roman Sentimental)』(2007年)

4)児童性愛の欲求を探求し、また分析する書物:エルヴェ・ギベールの『二人の子供たちとの旅(Voyage avec deux enfants)』 (1982年) と『あなたのせいで私はファントムをしつけることになった(Vous m’avez fait former des Fantômes)』 (1987年) 、トニー・デュベール(Tony Duvert)の『ファンタジーの風景(Paysage de Fantaisie)』(1973年)、ニコラ・ジョーンズ・ゴルラン(Nicolas Jones-Gorlin)の『薔薇のお菓子(Rose Bonbon)』 (2002年)、ルイ・スコレッキ(Louis Skorecki)の『かれは伝説になったかもしれなかったのに(Il entrerait dans la légende)』 (2002年)、さらに、女性のよるペドフィリアの小説として、ジョフリーヌ・ドナデュー(Joffrine Donnadieu)の『フランスの物語(Histoire de France)』(2019年) 。

5) フランス文学における性的暴力に関する証言としての小説:クリスティーヌ・アンゴ(Christine Angot)の『バカンスの一週間(Une semaine en vacances)』(2012年)、クリストフ・ティロン(Christophe Tiron)の『かれは私を愛していた(Il m’aimait)』(2004年)、ヴァネッサ・スプリンゴラ(Vanessa Springora)の『同意(Le consentement)』(2019年)、リンダ・プレストリー(Linda Prestely)の『秘密の中のケベックで(Au Québec dans le Secret)』(2011年)、マルティーヌ・アヨット(Martine Ayotte)の『罠——ある告発の話し(La Proie : récit d’une dénonciation)』(2008年)、アンヌ・ポッツヴァン(Anne Potvin)の『近親相姦——証言(Inceste : Témoignage)』(2019年)とマリー・ピア・ラフォンテーヌ(Marie-Pier Lafontaine)の『雌犬(Chienne)』(2019年) 。

6)アンドレ・ジッド、ジュリアン・グリーンとガブリエル・マツネフを含む作家の日記 。

 

[18] この証拠に関して、本法廷は、確認できた3つの重要な事を強調したい。第一に、Veilleux からの提出で分かるように、上記の書物の内容が間違いなく児童ポルノに該当するもので、ここでその内容を細かく記載する必要がないことも明白であること。

 

[19] 第二に、上記の著作の中には、評論家と一般読者に認められ、或いは権威のある賞を受賞した著者によるものもあるということ。この事実は、トニ・モリソン(Toni Morrison)のノーベル文学賞、アンヌ・エベール(Anne Hébert)とイブ・テリオー(Yves Thériault)の受賞したカナダ総督文学賞(prix du gouverneur général et Athanase-David)とジュリアン・グリーン(Julien Green)のアカデミー・フランセーズ文学大賞に言及すれば十分理解できる。

 

[20] 三番目に確認できた事は、本法廷において最も重要である。法廷において、検察側は、「性暴力に関する証言」という分野の文学が表現の自由の中心たる表現の部類に該当することを認めた。こうした表現は、書き手個人の精神的な自己実現に役立つものであると認識されており、また、近親相姦の被害者や、児童性犯罪の加害者についての、社会の在り方も含めての広い意味での正義の在り方に関する社会的議論にも有用であるとされているからである。

 

[21] この証拠には、Godbout(50歳)の証言が付加されている。彼の証言は、小説の刊行に対する法的措置によって起きた様々な出来事についての内容となっている。Godbout は、自身について、ホラー小説やホラーに分類されるサスペンス小説を数多く執筆してきた作家であると述べる。彼は、市民からの告発の後、2018年1月にケベック州警察の警察官から初めて尋問されたことにより、かなり動揺させられたと語っている。

 

[22]彼は、問題が解決したと思い、徐々に警察官とのやり取りによるストレスが解消されつつあった。しかし、その二ヶ月後、朝の6時に警察官二人が逮捕状と捜索差押令状を持って彼の家に現れ、全裸の状態で配偶者と一緒にベッドで寝ていた彼をそのまま逮捕した。Godbout は、その事でショック状態になっただけでなく、警察官一人が開いたドアの前で立っているまま、トイレに行かされたことに深い屈辱を受けたと主張している。彼の配偶者は、逮捕の一部始終を青ざめたまま目撃した。

 

[23] 警察官は、電話、パソコンとiPadを含めた電子機器と、小説『ヘンゼルとグレーテル』数冊を差し押さえた。その後、Godbout は、5時間〜5時間半ぐらいに及ぶ尋問をうけた。その尋問は、彼の配偶者との性生活についての質問や、彼によれば、彼に小児性愛者というレッテルが貼れるように仕組まれた質問を含んでいた。彼は、それに対して「子供に対する性暴力はこの上なく最低の行為だ」と答えたが、そのような質問を受けたことは特にショックであったと証言している。

 

[24]上記のことを踏まえて、本法廷は次の付記をつける必要があると判断した。

 

[25]本法廷は、警察が Godbout の逮捕と電子機器の差し押さえのために取った手段に対して、法外とは言わないまでも驚きを禁じえないと考えている。これは、本件で対象となっている立法規定の違憲性を判断する基準ではなく、『憲章』24条が保障する権利に関わることである。Godbout には、現行犯逮捕が必要になるような証拠隠滅を図る可能性はなかったし、あるいは追い込む必要がある隠れた小児性愛者でもなかった。彼は、コストコの倉庫営業施設のような公共の場所で、白昼堂々と自分の作品を販売している小説家である。

 

[26] こうした状況においては、警察の選んだ方法が適切であったかについて十分疑問が生じる。

 

[27] ただし、本法廷は、この疑問が本件の判決に影響しなかったことを明記したい。

 

[28] 付記終了。

 

[29]執筆活動を特に好んでいた Godbout だが、それ以来、創作活動ができないような状態に陥っており、児童ポルノ犯罪者として告発をされたことは、精神的に堪え難いことであると述べている。告発以降、日々最低限の生活を行う上でのことしかできず、もはや自分は生きているふりをしているにすぎない状態であるという。世間の目は自分を小児性愛者として見ており、ホラー作家としてスケープゴートにされているように感じているという。

 

[30] Godboutは、この状況を悪くとっている彼の元配偶者と息子の反応にも悩まされている。直接起訴状が提出されたことも受け入れがたいことであり、予備審問さえ許さなかった国家による執拗なやり方の犠牲になったと感じている。また、告発によって財政面での影響が広がりつつある。執筆もできず、彼の所有する不動産の価値の半分を弁護費用にあてる羽目になった。この状況は、彼に多大な財政的な被害をもたらした。

 

[31] Godbout は、201912月に限界を感じ、この状況下で生きることがもうできないと感じた。彼のFacebookの頁には、脅迫的で悪意に満ちたメッセージが寄せられている。この事件に伴うプレッシャーに耐えることができずに、彼は自殺を試みたが、妹にメッセージを残していたことで、父親の墓の前にいるところを警察に発見された。彼は、病院に搬送され、数日入院した。それ以降、薬物治療を受けている。

 

[32] 彼は、表現の自由を守る団体の存在を認識し、時々応援のメッセージを受けることがあると認めている。こうしたことが心の支えになってはいるが、彼は未だに状況に一人で対応している。

 

2. 検討 (省略) 33-148

 2.1 『憲章』2b)項への抵触 La violation de l’article 2b) de la Charte 33-35

 2.2 『憲章』1条による正当化 La justification en vertu de l’article 1 de la Charte 36

  2.2.1 判例法理 Les principes générau 37-44

  2.2.2 立法目的  L’objectif législatif 45-54

   2.2.2.1 立法にいたる経緯 L’historique législatif 45-54

  2.2.3 法律による利益と制限される権利の比例性 La proportionnalité entre la restriction du droit et les avantages des dispositions législatives 55-148

   2.2.3.1 合理的関連性  Le lien rationnel 55-62

   2.2.3.2 最小限の制約 L’atteinte minimale 63-125

   2.2.3.3 比例性 La proportionnalité 126-148

 

3.『憲章』7条への抵触 (省略) 149-162

 

4. 『憲章』11d)項への抵触 (省略) 163-189

 4.1 違反の存在 La détermination de l’existence d’une violation 163-189

 

5. 結論 190-194

 

[190] 本件は、「Sharpe」事件とは異なり、被告人が自分の事件に関係のない仮定的な法律適用の問題点の指摘によって、立法措置の無効を主張するものではなく、逆に、本件と同様の刑法163.1(1)c号と163.1(6)b)号の同時適用が、既存の文学作品の多くにも及び得る潜在的な効果を確認するという流れとなっている。本法廷はこの点について詳細には立ち入らないが、Veilleuxの証言にあった他の文学のジャンルでも、未成年者との性行為を教唆や推奨しないかぎり、同じ結論になることが理論的には考えられる。

 

[191] 本法廷は、未成年者との性行為を「推奨する」や「教唆する」という要件——あるいはこれに相当する要件——が置かれていることが、児童ポルノに該当するとして文字資料を犯罪化する立法が憲法上有効であるための必要的な条件であるという判断を下す。

 

[192] 本件では、刑法163.1(1)c)号と163.1(6)b)号の同時適用における、こうした要件の欠如がもたらす問題が確認できた。

 

[193]したがって、『憲章』52条により、刑法163.1(1)c)号と163.1(6)b)号を違憲と宣言するのが、本件の最も適切な救済方法である。しかしながら本法廷は、この違憲状態を訂正する義務は本来的には立法府にあると考えている。

 

[194] この違憲宣言により、GodboutADA 出版株式会社は無罪となる。

 

 

判決 195-199

 

[195] Yvan Godbout2020221日に申立てた違憲宣言の求めを部分的に認める。

 

[196] 刑法163.1(1)c)号と163.1(6)b)号が、「カナダ権利と自由の憲章」2b)号と7条に抵触していると宣言する。

 

[197] 「カナダ権利と自由の憲章」2b)号と7条への抵触が、1条によって正当化できないと宣言する。

 

[198] 「カナダ権利と自由の憲章」52条によって、刑法163.1(1)c)号と163.1(6)b)号が無効であることを宣言する。

 

[199] Yvan GodboutADA 出版株式会社を、本件の起訴について無罪とする。

2020年12月13日日曜日

「マンガのお化け」のセクシュアリティ

2020年10月16日収録
「マンガのお化け」のセクシュアリティ
 ~マンガ研究から「キャラ」への欲望を考察する~

講師:伊藤剛さん (マンガ評論家/東京工芸大学教授)



 マンガなどの「キャラ」自体を性的対象とするセクシュアリティについて、マンガ理論の研究成果を用いて考察する講演動画です。ご自身も実写のポルノやグラビアなどには性的好奇心を抱くことが全くないと語る伊藤剛さん[1]が、人間の代替ではなく非実在のキャラ自体に性的に惹かれるとはどういう意味かについて解説をしてくださいました。

[1] 2019『MANGAの自由』p.34-35


2020年11月25日水曜日

【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について

【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 いわゆる「二次創作」や「キャラ」の著作権法上の扱いが焦点となった2020年10月6日の知的財産高等裁判所判決(令和2(ネ)10018)について、情報法学者の白田秀彰先生に徹底解説して頂きました。ぜひご覧ください。



講師:白田秀彰さん (情報法学者/法政大学社会学部 准教授)
収録:2020年11月21日 (12月24日に公開予定で準備を進めていましたが、講師の白田先生が急ピッチで制作をしてくださり、前倒しで公開できることになりました。)

(1)【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 https://youtube.com/watch?v=zd9m_Y7MI7o
(2)【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 https://youtube.com/watch?v=JLmhMU-91NY
(3)【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 https://youtube.com/watch?v=84YFiybDpH4

関連書籍:
『しなやかな著作権制度に向けて ― コンテンツと著作権法の役割』
 https://www.shinzansha.co.jp/book/b285049.html
『性表現規制の文化史』
 https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=825



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2020年11月21日土曜日

志田陽子さん × 吉澤弥生さん

 『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』
 日本語版 発行記念対談 第2回 志田陽子 × 吉澤弥生

 2020年8月にNPOうぐいすリボン出版局から『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』日本語版を発行したことを記念しまして、監修・監訳を務めた志田陽子さん(憲法学者/武蔵野美術大学教授)と、芸術の自由に関係する各分野の専門家との対談企画を実施します。
 第2回目のゲストは、芸術と労働、芸術と自治体政策、芸術とNPOなどの研究で知られる社会学者の吉澤弥生さん(共立女子大学文芸学部教授)です。



2020年11月21日 ZOOMにて実施
司会:荻野幸太郎 (NPOうぐいすリボン)

対談記事は、こちらから

2020年11月3日火曜日

志田陽子さん × 飯田志保子さん

『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』
 日本語版 発行記念対談 第1回 志田陽子 × 飯田志保子

 2020年8月にNPOうぐいすリボン出版局から『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』日本語版を発行したことを記念しまして、監修・監訳を務めた志田陽子さん(憲法学者/武蔵野美術大学教授)と、芸術の自由に関係する各分野の専門家との対談企画を実施します。
 第1回目のゲストは、あいちトリエンナーレ2019の学芸統括などを務めた現代美術キュレーターの飯田志保子さんです。


2020年10月8日 ZOOMにて実施
司会:荻野幸太郎 (NPOうぐいすリボン)

対談記事は、こちらから