2017年8月11日金曜日

インタビュー「岐路に立つマンガ論争」 ~編集長の永山薫さんに休刊危機の真相を聞く~

マンガ論争」が休刊の危機にある。そんな噂が流れている。

「マンガ論争」は、エロ漫画をはじめ、いわゆる「二次元系」「オタク系」と呼ばれるコンテンツに関係する表現規制問題をウォッチングしてきたミニコミ誌だ。
 第1号と位置付けられている『マンガ論争勃発』が2007年に発行されて以降、この10年間、児童ポルノ法制を転用したマンガ規制の動きや、地方自治体の不健全図書制度の問題など、マンガを巡る法的・政治的・社会的な論争を追い続けてきた。

 業界関係者にも購読者が多く、夏と冬のコミックマーケットに全日特設ブースを開設しているミニコミ誌に、いったい何があったのだろうか。

 編集長の永山に尋ねたところ、確かに「マンガ論争」は休刊の危機にあった。

 折からの出版不況の影響で副編集長の佐藤がUターン就職し、編集業務を縮小したことや、62歳になった永山自身の体力の衰えなどにより、最近では、コミケへの出展自体が危ぶまれたり、記事のクオリティに満足できないこともたびたびあったという。



 また、「マンガ論争」の売上部数も、損益分岐点をすでに割り込んでしまい、東京都青少年条例の改正問題(いわゆる「非実在青少年騒動」)の際には2000部を超えていた売上が、児童ポルノ法の改正が終わった現在では500部以下にまで落ち込んでいる。

 マンガ論争自身のマンパワーが低下してテコ入れが急務であったにも関わらず、いわゆる「表現規制問題」へのオタク層の関心の低下による売上減少が続き、必要な投資ができなかったということのようである。



「2017年の冬コミまでは何とか発行を続けるが、来年以降どうなるかは完全に白紙だ」と永山は語る。

 マンガ論争は売上の回復を目指して、記事の充実や、通販・電子版の拡充などを模索中だ。

 前号の「マンガ論争スペシャル03」では、二次元にしか興味がないと公言した初の国会議員:小野田紀美や、マンガ規制問題を鋭く描いた『有害都市』で文化庁メディア芸術賞を受賞した漫画家:筒井哲也へのインタビューが掲載されるなど、内容の充実化には一定程度成功したと言えるだろう。
 この夏コミ号からは、ろくでなし子のマンガも掲載される。

 まだ「マンガ論争」を潰すわけにはいかないと、永山は静かに語った。

「直近の法規制の問題は峠を超えたかもしれないが、マンガにとって法規制以上に怖いのは、何の法的根拠もないままに空気で進められていく事実上の検閲だ」と永山は懸念する。「有害コミック騒動のときは、法令の変更によらないマンガ規制があちこちで起きた。規制や言われのないバッシング、あるいは過度の自主規制によって食えなくなって廃業したり、自ら命を絶ってしまった漫画家がいることを僕は聞いている。一番悲しいのは、そういうイジメのようなマンガ叩きに、一部のマンガ家や、オタク・腐女子までもが加担してしまうことだ」