2017年6月18日日曜日

分散型ソーシャルネットワークをめぐる法的問題:マストドンを事例として

2017年6月18日に開催した講演会「分散型ソーシャルネットワークをめぐる法的問題:マストドンを事例として」には、プラットフォーム事業者や研究者を中心に約60人が参加して下さいました。講師の成原慧先生と、参加者の皆様に御礼申し上げます。

 演題:分散型ソーシャルネットワークをめぐる法的問題:マストドンを事例として
 講師:成原慧さん (東大院情報学環客員研究員)
 日時:2017年6月18日(日)19:00から
 場所:あうるすぽっと
 主催:うぐいすリボン
 共催:女子現代メディア文化研究会
 後援:日本インターネットプロバイダー協会



内容:
 話題の分散型ソーシャルネットワーク「マストドン」。日本でもインスタンスが相次いで登場していますが、その普及と同時に、いわゆる「非実在」系の性表現規制問題などの摩擦も表面化してきました。本講演会では、アーキテクチャと法の問題に詳しい東京大学大学院情報学環客員研究員の成原慧先生をお招きして、分散型ソーシャルネットワークの特徴と、それに関連する法的問題や、将来の政治過程に与え得る影響についてまで講演をして頂きました。


(写真提供:マンガ論争)

講師による講演内容紹介
「インターネット上では、国家による直接的な法規制が困難となる反面で、アーキテクチャとそれを設計・監理する媒介者を通じて間接的に違法・有害情報の流通が規制されてきた。マストドンをはじめとする分散型ソーシャルネットワークは、プラットフォームの分散により、ネットの自由を取り戻す救世主なのだろうか?それとも、メディアの分断により、ネット上の民主主義を脅かす破壊者なのだろうか?本講演では、マストドンを事例に分散型ソーシャルネットワークの特性を確認した上で、分散型ソーシャルネットワークの発展が表現の自由と規制、そして民主主義に対して提起する問題について考えたい」


主催者からのお願い  今後も「表現の自由」に関する講演会等を継続するために、皆様からの寄付を必要としています。クレジットカード、コンビニ支払、銀行振込、ゆうちょ振替で簡単に決済できますので、ぜひ御協力くださいませ。


2017年6月14日水曜日

埼玉県警による漫画家への配慮申入れの報道について



埼玉県警察が、同人漫画作品に登場する手口を模倣した性犯罪行為があったとされることを理由に、作者に対して作品内容の自粛などを求めたと報道されている件、報道後、県警にはメディアや議員等からの問い合わせが相次いでいますが、漫画家への働きかを行ったのかどうかを含め、県警は回答を差し控えるとしています。

 この問題について、メディア法の専門家である京都大学の曽我部真裕 教授からコメントを頂きましたので、ご紹介いたします。

(撮影:永山薫

 

曽我部真裕 教授のコメント

警察が表現物の内容を問題視して要請を行った例としては、200911月頃に暴力団を美化・擁護するような書籍、雑誌等が青少年に対して暴力団に対する誤った憧れを抱かせる等の悪影響を与えるとしてコンビニ各社に撤去要請を行った事案が知られている。この件は訴訟になり、福岡高裁は2013329日、強制の要素がなかったことなどを理由に違法ではないとしている。
たしかに、一般論として、警察が犯罪予防等の使命の達成のために企業や市民に対して任意の協力要請を行うことは認められている。コンビニの例で言えば、地域防犯のために様々な協力を行っているのは周知のとおりである。
しかし、こうした手法は透明性や基準の明確性に欠けるところがあり、こと表現の自由に関してこうした申し入れをすることには慎重であるべきだろう。少なくとも、こうした申し入れをした際には必ず詳細な事案や理由を公表し、外部からの検証が可能であるようにしておく必要がある。