2020年11月25日水曜日

【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について

【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 いわゆる「二次創作」や「キャラ」の著作権法上の扱いが焦点となった2020年10月6日の知的財産高等裁判所判決(令和2(ネ)10018)について、情報法学者の白田秀彰先生に徹底解説して頂きました。ぜひご覧ください。



講師:白田秀彰さん (情報法学者/法政大学社会学部 准教授)
収録:2020年11月21日 (12月24日に公開予定で準備を進めていましたが、講師の白田先生が急ピッチで制作をしてくださり、前倒しで公開できることになりました。)

(1)【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 https://youtube.com/watch?v=zd9m_Y7MI7o
(2)【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 https://youtube.com/watch?v=JLmhMU-91NY
(3)【講演】同人誌の無許諾ネット配信事件知財高裁判決について
 https://youtube.com/watch?v=84YFiybDpH4

関連書籍:
『しなやかな著作権制度に向けて ― コンテンツと著作権法の役割』
 https://www.shinzansha.co.jp/book/b285049.html
『性表現規制の文化史』
 https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=825



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2020年11月3日火曜日

志田陽子さん × 飯田志保子さん

『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』
 日本語版 発行記念対談 第1回 志田陽子 × 飯田志保子

 2020年8月にNPOうぐいすリボン出版局から『芸術の自由マニュアル/芸術の検閲マニュアル』日本語版を発行したことを記念しまして、監修・監訳を務めた志田陽子さん(憲法学者/武蔵野美術大学教授)と、芸術の自由に関係する各分野の専門家との対談企画を実施します。
 第1回目のゲストは、あいちトリエンナーレ2019の学芸統括などを務めた現代美術キュレーターの飯田志保子さんです。

2020年10月8日 ZOOMにて実施
司会:荻野幸太郎 (NPOうぐいすリボン)

対談記事は、こちらから



2020年11月1日日曜日

カナダでの歓迎すべき勝訴

 この記事は、Prostasia Newsletter #27 掲載の記事「A welcome victory in Canada」を、発行元のプロスタシア財団の許可を得て仮訳したものです

 

Prostasia Newsletter—October 2020

カナダでの歓迎すべき勝訴



 20209月、ケベック州上級裁判所は、古典的なおとぎ話をホラー小説に翻案した『ヘンゼルとグレーテル』が児童ポルノ犯罪に当たるとして起訴されていた、著者のイヴァン・ゴッドバウトと出版者を無罪としました。この待望の判決は重要なものです。無罪判決に加え、検察側が訴追の根拠としたカナダの児童ポルノ法の一部について、カナダ権利自由憲章を侵害したとして、無効であると宣言されたからです。

 

そもそもフィクションの禁止が存在すべきとされた理由を明らかにするために、まずはカナダの法制史を紐解くことにしましょう。1985年、カナダの法律に追加された元々のフィクション禁止条項は、「18歳未満の人との性的活動を擁護または助言するあらゆる書面または視覚的表現」を対象としていました。また、この法律は、「芸術的な価値」による抗弁を認めていました。

 

この禁止が拡大されるきっかけが、2001年の女王対シャープ事件でした。シャープは、思春期の少年のヌード写真を所持していたという児童ポルノ犯罪で起訴されましたが、シャープ自身が執筆した架空の物語についても起訴されました。シャープは弁護の中で、フィクションの禁止は違憲であると主張しましたが、裁判所は違憲とまで宣言することはしませんでした。配布を目的としない自分で作成した素材については暗黙の例外が認められており、10代の若者が自分たちのために撮影した自作の映像のような事例については例外として認められていたにも関わらず、裁判所はフィクション禁止する法律については大筋で合憲と認めたのです。裁判所はフィクションの禁止を是認できる理由付けについて、次のように説明しました。

 

科学的証拠は有力ではないものの、このような場合においては、関連性が存在する根拠を裏付けるのに十分なものといえる。児童ポルノに曝されることは、小児性愛の抑止と児童の性的虐待に対する抑制を妨げる可能性がある。それは、非道なこと、良心を麻痺させること、異常なことを正常なことのように思わせ、不道徳を容認できるかのように思わせるようなことが児童ポルノに曝されることでもたらすかもしれないことを、禁止するということだ。

 

この関係の科学的証拠は、確かに有力ではありません。これまで行われた研究は限られていますが、存在するエビデンスは、おそらく直感に反して、子供に関する性的空想への耽溺は犯罪的攻撃性とはあまり関係がなく、「仮想児童ポルノ」へのアクセスは、大人と実在児童とのセックスを容認する態度とも関係がないことを示唆しています。そして、性的欲求を解消するようなコンテンツが利用できることは、実際の子供に対する性犯罪の発生率を減らす可能性もありそうなのです。

 

法律の合憲性(法学者たちからは批判された判断)を大筋で支持したにもかかわらず、裁判所はシャープを無罪としました。彼の書いたストーリーが、そのような性的活動を支持または助言する内容ではなく、そして文章が芸術的な価値を持っていたためです。このことはカナダ社会に論争を引き起こし、今回のゴッドバウトの事件で検討された法律の改正を促しました。

 

シャープ事件論争に応えて2005年に2つの最も重要な法改正が行われました。フィクションの禁止を拡大して、「主な特徴として性的な目的のために、この法律の下で犯罪となる18歳未満の人物の性的活動を描写したあらゆる文章」を含めたのです。虐待を「擁護または助言」するという要件を満たすことは必要ではなくなりました。もう1つの改正は、「芸術的価値」による抗弁と、「教育的、科学的、または医学的目的」がある場合についての例外規定を廃止して、被告の行動が「司法または科学の管理に関連する正当な目的を持っていて」、かつ「18歳未満の人に過度の危害を加えるリスクをもたらさない」ことという要件に置き換えたことでした。

 

皆さんの予想通りこの時の議論は二極化し、一部の議員たちは、はるかに狭くなった要件の例外条項についてすら「危険な抜け穴」であると批判し、一方で法学者たちは、「物語や絵画のような架空の視覚的表現やテキストを見ただけで人を刑事罰の対象にすることはばかげている」と懸念を表明して、このような法律は違憲とされるだろうとの予測をしました。

 

ゴッドバウト事件判決により、この予測は今や現実のものとなりました。2005年に改正された両方の重要な条項が取り消されました。無効と宣言された1つ目の規定は、「18歳未満の人物との性的行為を擁護または助言する文章、視覚的表現、または録音物」という要件からの改正についてでした。ブランチャード裁判官の決定(フランス語)は次のように述べています。

 

「擁護または助言」という要件が必須でないこと、または児童ポルノの定義においてそれに相当する要件がないことは、表現の自由、特に小児性愛者の手で経験した虐待を明確な言葉で表現したい人の権利を、根本的に縮減させることになる。

 

違憲とされた法律の2つ目は、「正当な目的」の抗弁を主張する被告が、その文書が「18歳未満の人物に過度の危害を加えるリスクをもたらさない」ことを示さなければならない点でした。この点についての判断は少し不透明ですが、虐待を「擁護または助言」しない作品の場合にまで、この要件が被告に過度の立証の負担をかけるという点に着目したようです。

 

しかし、ゴッドバウト事件は、以前にシャープ事件の法廷によって受け入れられた、フィクションが未成年者に実際に危害を加えるリスクを生み出すという主張に異議を唱えることはしませんでした。この主張は、フィクションを一律禁止することを憲法上正当化する基盤となっているものです。検察は、この問題について科学的に向き合う必要性を回避するために、「客観的に検証可能な危害は、児童ポルノと性的暴行の態様との間の直接的な科学的相関関係によってではなく、憲章の基本的価値観、人権に関連する法律、およびカナダが遵守する国際文書との関連に従って評価されるものである」と述べています。

 

ブランチャード裁判官は、残念ながら、次のように結論付けてこの論旨を受け入れました。

 

効果についての科学的証拠がない場合であっても、常識は常にそのような問題における有用な意思決定ツールであり、歪んで堕落した心にとって、文書または視覚的な児童ポルノ素材が、特定の行動の逸脱を助長して、未成年者に過度のリスクをもたらという結論を出すことは、不合理ではない。最高のものも最悪のものも、すべてが可能であり、またあり得るということを、人間性というものが教えてくれているからである。

 

このような理由付けは、「リスク」の概念を、合理的な調査を何らかの形で超越する信仰へと変換してしまいます。刑事法のあらゆる事柄において、このような方法を許容できる理由はありません。フィクションが子供にリスクをもたらす場合、プロスタシア財団が試みているように、そのリスクを科学的に調べることができるはずです。私たちの最近のブログ記事では、禁じられた考えを単に読むことが読者に「道徳的腐敗」を生み出す可能性があるという考え方について探求し、真相を突き止めています。読者の心に影響を与えると推定されるために、あらゆる種類の文学を禁止することは「魔術的な思考」であって、それでは法とはいえないのです。

 

ゴッドバウト事件判決が不十分なもう1つの分野は、カナダの児童ポルノ法における視覚芸術の禁止の問題について、さらに踏み込むことができていない点です。これは仮定の懸念以上のものです。一例を挙げると、昨年、カナダ児童保護センターは、ブログに絵を投稿したとして17歳の少女を逮捕しました。また、カナダの法律では、DD / lgまたはエイジプレイをテーマにした18歳以上の成人のみが出演する写真やビデオを作ったことで、児童ポルノ製造罪での有罪判決を受ける可能性もあります。

 

広範囲なカナダの児童ポルノ法は、シャープ事件裁判にたずさわったECPATなどによっても、未成年者の芸術的イメージの犯罪化を世界中に普及することを提唱する論拠として使用されてきました。2019年、国連でのキャンペーンにより、芸術的な画像を現実の児童の性的虐待の画像と同等に各国が扱うべきであるという衝撃的な委員会勧告が出されました。

 

したがって、ゴッドバウト事件判決が、文書による著作物が虐待を擁護または助言しない限り、憲法上保護されていることを確認したことを歓迎しますが、それだけでは十分ではありません。カナダの法律は依然として不当に広範であり、カナダでの芸術的表現は危険にさらされたままです。ゴッドバウト事件判決の結果として、立法者たちはカナダの児童ポルノ法を再検討するために再び絵画の議論に戻る可能性があります。そうした議論の際には、私たちは、架空の子供ではなく、実際の子供たちの福祉が議員の最優先事項になることを願っています。