朴景信教授からは、「私の仕事に興味を持って下さり、ありがとうございます」とのコメントが寄せられています。
「春香伝」を映画にしても児童性犯罪か 表現の自由
2012.11.19 京郷http://blog.naver.com/kyungsinpark/110152188264
ある表現物が、児童性犯罪を誘発する「猥褻」なものとするなら、既存の猥褻物規制で制裁を加えれば良い。なぜ世界各国は、児童ポルノ規制を別物としてとらえているのか。児童ポルノ規制は、猥褻物規制とはまったく違った目的と論理を持っている。
猥褻物規制は、表現物が見る人の心を汚すという論理により、そういった汚れを阻止することを目的としている。児童ポルノ規制は、児童を性的表現物に出演させること自体が、その児童に精神的被害を与えるという論理に基づき、そのような児童の性労働を禁止することを目標としている。(後者の規制は、表現物の猥褻性とは関係がないため、国際的にも児童「猥褻物」規制とするのは誤りで、児童「ポルノ」規制とするのが正しい用語である。) これにより猥褻物規制は、猥褻な表現物の配布、展示、公演等のみを規制するが、児童ポルノ規制は児童性労働の結果物「存在」自体を禁止し、配布、展示、公演だけでなく児童ポルノの所持自体も犯罪とみなしている。
このような理由で児童ポルノ規制は、児童性犯罪、すなわち児童に対する物理的攻撃を処罰する児童青少年の性保護に関する法律(「児青法」)に含まれている。すなわち、児童を性的表現物の製造に動員すること自体を児童性犯罪の一つとして規定したものである。言い換えれば児童ポルノ規制は、表現物規制ではなく、児童関与ポルノ製造規制なのである。
このような立法の主旨に合うように児青法を解釈すると、最近、実存の児童が製造に関与していないにもかかわらず、児童の「キャラクター」のみが登場するアニメーションや動画を処罰したことは、法を誤って適用したのものである。なぜなら性的表現物の製造に、動員され搾取されている保護対象がない状況において、この法を適用しているからだ。2002年に憲法裁判所と米国連邦最高裁判所のすべてが、「児童ポルノ規制は実存の児童が関わる場合にのみ適用すべきだ」とした判例がある。児童キャラクターが登場して性的行為をしたからと言って、それを見た人が児童性犯罪を犯すという明白で切迫した危険がないという理由からである。
法第2条第5号は、「児童青少年として認識される・・・表現物(キャラクター)」が登場して性的行為を行う内容を規制対象としてみなしているが、前述のものは、児童ポルノ規制の元祖であるアメリカから由来するものである。アメリカ連邦法は、(1)実存の児童が製造に関与した(2)映像が実存の児童が出演したかのように製造された(合成などを通じて)(3)モデルとなった児童が「認識される」、その他視覚的技法(絵、アニメ、CG)が利用されている場合を児童ポルノと規定している。すなわち性的に搾取される実存の児童の存在を前提にしているのである。法2条5号もこのように解釈されなければならない。そのように解釈されなければ、「実存する特定の児童青少年として認識される表現物」に改定されなければならない。
もちろん、2011年、上記内容を含ませた法改正案を通じ国会議員たちは、ただ児童搾取を阻止するのではなく、「見る人が児童性犯罪の性向を持たないようにするための一種の表現物の規制」だと考えた。それで実存の児童と無関係なキャラクターの性行為も規制対象と考えたのである。しかし、文言一つを変えようとする時、他の意図があるからと言って児青法全体の解釈を変えることはできないし、そのように解釈を変えれば次の理由で上位法である憲法に抵触する。
現在児青法は、表現物の受け手までも処罰し(法8条4項)、内容が猥褻ではない場合においても処罰する。表現物規制の大原則の一つは、表現の発話者を処罰し、受け手を処罰することはできないということだ。名誉毀損罪は、言葉を発した人と言葉の受け手の相互作用で評判の低下が発生することで犯罪が完成するが、言葉の受け手は処罰しない。それにもかかわらず、児青法が受け手をも処罰する理由は、当初は表現物規制ではなかったからだ。また、児童ポルノ規制が非猥褻物を処罰する唯一の憲法的根拠は、児童性労働の予防という法益である。 しかし、実際、児童性労働の可能性がないにもかかわらず、児童の「キャラクター」が性的行為をする内容があるからと言って猥褻でもない内容を処罰すれば憲法に抵触する。
このままなら「銀河鉄道999」の鉄郎がメーテルの入浴シーンを見て顔を赤くする場面も危なくなる。また、16歳の男女のラブシーンがある「春香伝」を映画にすれば、俳優が大人だとしても明らかに児童ポルノ規制で処罰される。
もちろん、アニメやCGで作られた仮想のキャラクターが、「銀河鉄道999」よりずっと赤裸裸な性的行為をする作品もたくさんあるし、「春香伝」の内容にも非常に赤裸々な場面がある。しかし、内容が間違いなく猥褻ならば、猥褻物規制で配布と展示を処罰することは可能である。量刑もはるかに重い児童ポルノ規制で所持まで処罰することは、表現の自由の根幹を搖るがすことにもなりかねない。最近、主に非正規職からなるマンガ産業において、児青法の過度な適用で失業者が増え始めたという声も上がっている。
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参照:ハンギョレ新聞(2012.11.21)
【春香伝・クレヨンしんちゃんも児童ポルノ】
参照:中央日報(2012.12.24)
【「2カ月間に数千人が検察行き」 児童わいせつ物所持者、あまりにも多過ぎて】
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