2012年8月22日水曜日

『非実在少女のるてちゃん』名古屋公演

 今週末、8月25日(土)と26日(日)に、名古屋駅近くの劇場ナンジャーレで、東京都青少年健全育成条例をテーマにした演劇『非実在少女のるてちゃん』が上演されます。
『非実在少女のるてちゃん』名古屋公演


 NPOうぐいすリボンでは、今回、名古屋公演に協賛しており、25日の夜には観劇後の懇親会も開催します。
うぐいすリボン名古屋オフ会 ~非実在青少年騒動の舞台裏~




『のるてちゃん』は、マンガやアニメに登場する18歳未満の登場人物の性描写を禁止するという条例案に、マンガ研究会の高校生たちが立ち向かうというストーリーです。

 それまで政治活動とは一切無縁だったマンガ好きの高校生たちが、議員に陳情に行き、メディアを通じて自分たちの考えを世論に訴え、少しずつ周りの大人たちと世の中を変えていくという、まさにポリティカル・ヒューマン・ドラマの真髄とも言える作品です。

 日本でも、政治をテーマにした多くのドラマが作られましたが、これほどしっかり「政治参加」を描いた作品はそうそうないと思います。
 個人的な感想としては、米国の人気ドラマ『ザ・ホワイトハウス』に勝るとも劣らない極上の作品だと言っていいくらいです。

 さて、この作品の重要なテーマの一つは、「表現の自由」です。主人公とその支援者たちは、なぜ自分たちがマンガを守りたいのか、どうして不愉快な表現をも法で禁止することがあってはならないのかを、真摯に訴えます。

 しかしながら、実は、この作品の中心テーマは、実は「表現の自由」ではないのではないかと私は思っています。

『のるてちゃん』の本当の中心テーマは、「人間の尊厳」です。

 主人公は、女の子を愛せない男子高校生です。
 彼は、自分が異常なのではないかと悩みながらも、二次元の女の子しか愛せない自分を受け入れてくれる仲間を見つけます。

 もう一人の主人公は、大人の女性を愛せない成人男性です。
 彼は、自分を偽り、ノーマルとされるセクシャリティを持った普通の男性を演じ続けてきた模範的な人間です。

 この二人にとって、性表現規制の持つ意味とは、単なる本屋の営業についての取り締まりではなく、自分自身の尊厳がかかったテーマに他なりません。
 その法令の持つ意味は、世界が彼らを「逸脱した、隔離されるべき、罪深い存在」と断じるものに他ならないからです。

 東京で『のるてちゃん』を観劇後、私は社会学者の宮台真司さんと、お話をする機会を得ました。
 宮台さんは、脚本を書いた高間響さんを「天才」と絶賛し、『のるてちゃん』の意義が「表現の自由」に留まらないのではないかという私の指摘に賛意を示してくれました。



(左:高間響さん、右:宮台真司さん)


「性というのは、食べ物の好みや住居の選択とは本質的に違って、人間の尊厳に関わる特別なテーマだと思います」
「性というのは、一人だけで抱えられる問題ではなく、コミュニティからの承認があってこそ救われるということがあります」
といったことを宮台さんは述べられていました。

 私も同意見です。

『非実在少女のるてちゃん』は、おそらくマンガの性表現規制にずっと反対を続けている、あなたの物語です。
 自分自身の「性」について、法令で口出しされたくない・強制されたくないと抵抗する物語であり、
 簡単に他人には打ち明けられない「性」の孤独が、コミュニティによって承認され祝福される日を描いた希望の物語です。

 ぜひ、今週末は『非実在少女のるてちゃん』名古屋公演に足をお運び下さい。


『非実在少女のるてちゃん』名古屋公演
 日程:2012年8月25日(土)~8月26日(日)
 会場:名古屋(劇場ナンジャーレ)
 料金:前売り2000円 当日清算 2500円 当日 3000円
 開場:8月25日(土)19時から 26日(日)13時から/17時30分から
 主催:劇団 笑の内閣
 提供:NPO法人うぐいすリボン