2014年10月1日水曜日

韓国地裁における非実在児童ポルノの合憲限定解釈無罪事件

水原地方法院城南支院
                判決
事件 2014ゴダン285

[] 児童·青少年の性保護に関する法律違反[訳者注釈i](わいせつ物製作·配布等)
  {認められた罪名 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(わいせつ物流布)}

[] 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(わいせつ物流布)

[] 児童·青少年の性保護に関する法律違反(わいせつ物製作··配布等)幇助
  {認められた罪名 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(わいせつ物流布)幇助}

[] 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(わいせつ物流布)幇助

被告人 
1(自然人)   訴因[][]
2(自然人)   訴因[]
3(自然人)   訴因[] 
4(自然人)   訴因[][]
5(株式会社)  訴因[][]

判決宣告 2014924



                 主文

被告人1、4を各罰金1000万ウォンに、被告人2を罰金300万ウォンに、被告人4を罰金150万ウォンに、被告人5株式会社を罰金700万ウォンに処する。
被告人1、2、3、4が上記の各罰金を納めない場合は、10万ウォンを1日に換算した期間の間、上記の被告人たちを労役場に留置する。
被告人たちに各罰金相当額の仮納付を命じる。



                 理由

犯罪事実
被告人1は、インターネットウェブハードサイトである「Aサイト」(以下「この事件サイト」とする)の秘密クラブである「B」、「C」、「D」、「E」の運営者であり、被告人2は、同じサイトの秘密クラブである「F」の運営者であり、被告人3は、同じサイトの秘密クラブである「G」の運営者であり、被告人4は、同じサイトの運営会社である被告人5の株式会社の代表取締役としてこの事件サイトの運営を統括する者である。

1。被告人1
誰もが情報通信網を通じてわいせつな符号、文言、音響、画像または映像を配布、販売、賃貸、もしくは公然と展示してはならない。
それにもかかわらず、被告人1は、20111028日頃、彼の住居である_で、この事件サイトの秘密クラブである「B」のアニメーション成人(22)カテゴリーに、登場キャラクターたちが集団で性行為する内容のアニメである「おっぱいハート~彼女はケダモノ発情期ッ!? 甘姉・美弥~天然ブラコンの発情巨乳」のわいせつ物をアップロードし、定額制のクラブ会員が一定のポイントを支払うとダウンロードできるように配置したことをはじめ、その時から2013913日頃まで、上記のような方法で、この事件サイトの秘密クラブである「B」、「C」、「D」、「E」に、別紙の犯罪一覧表に記載されたわいせつアニメ17個を配布し、一般的なわいせつ画像ファイル73,967個を1,842,918回にわたって配布した。

2。被告人2
誰もが情報通信網を通じてわいせつな符号、文言、音響、画像または映像を配布、販売、賃貸、もしくは公然と展示してはならない。
それにもかかわらず、被告人2は、201331日頃、彼の住居である_で、この事件サイトの秘密クラブである「F」に、男女の性行為のあるわいせつ動画をアップロードしてクラブ会員に配布したことをはじめ、その時以来、2013912日まで、上記「F」に、943個のわいせつ動画ファイルを885,296回にわたって同じ方法で配布した。

3。被告人3
 誰もが情報通信網を通じてわいせつな符号、文言、音響、画像または映像を配布、販売、賃貸、もしくは公然と展示してはならない。
それにもかかわらず、被告人3は、201332日頃、彼の住居である_で、この事件サイトの秘密クラブである「G」に、男女の性行為のあるわいせつ動画をアップロードしてクラブ会員に配布したことをはじめ、その時以来、2013912日頃まで、上記「G」に、768個の一般的なわいせつ動画ファイルを400,646回にわたって同じ方法で配布した。

4。被告人4
被告人4は、被告人1、2、3が上記の第1、第2、第3項のように、わいせつ物をこの事件サイトの各秘密クラブに投稿して配布しているという事実をよく知っていながら、これを助けるために、従業員たち一緒にわいせつ物のフィルタリング及びモニタリングで検出されたわいせつ物に対する遮断措置を行わず、秘密クラブへの参加促進、ポイントの現金両替などの行為をすることによって彼らのわいせつ物の配布行為を幇助した。

5。被告人5 株式会社
被告人5 株式会社は、その代表取締役である被告人4が上記の第4項のように、業務に関連してわいせつ物配布行為を幇助した。

証拠の要旨

法令の適用
1。犯罪事実に関する法条と刑の選択
○被告人1、2、3 : 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律第74条第1項第2号、第44条の71項第1号(包括して罰金刑を選択)
○被告人4 : 刑法第32条第1項、情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律第74条第1項第2号、第44条の71項第1号(包括して罰金刑を選択)
○被告人5 株式会社 : 情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律第75条、第74条第1項第2号、第44条の71項第1号(包括して罰金刑を選択)
1。労役場留置
1。仮納付命令


無罪部分

無罪部分1
被告人1に対する児童·青少年の性保護に関する法律違反(わいせつ物製作·配布等)の点{犯罪事実の第1の「ガ。項」の中で、別紙の犯罪一覧表のアニメーション(以下、「この事件アニメーション」とする)に関する主位的公訴事実の部分}

公訴事実
誰もが児童·青少年利用わいせつ物を配布·提供したり、公然と展示または上映してはならない。
それにもかかわらず、被告人は、20111028日頃、自分の家である_で、秘密クラブ「B」のアニメーション成人(22)カテゴリに、青少年たちが裸で登場して性行為する内容のアニメーションである「おっぱいハート~彼女はケダモノ発情期ッ!? 甘姉・美弥~天然ブラコンの発情巨乳 」をアップロードし、定額制のクラブ会員が一定ポイントを支払うとダウンロードできるように配置したことをはじめ、その時以来、2013730日頃まで、 この事件サイトの「B」、「C」の秘密クラブに、別紙の犯罪一覧表に記載された17個の児童·青少年利用わいせつ物を配布した。

弁護人の主張とこの事件の争点
被告人の弁護人は、この事件のアニメーションに登場する各キャラクターが「児童·青少年として明らかに認識することができる表現物」に該当しないという趣旨の無罪主張をするので、その主張について判断する。

判断

1)この部分の公訴事実に関連する法律条項と児童·青少年利用わいせつ物の定義規定
この部分の公訴事実に適用される児童·青少年の性保護に関する法律(以下、「アチョン法」とする)第11条第3項(以下、「この事件法律条項」とする)は、児童·青少年利用わいせつ物を配布提供したり、公然と展示または上映するなどの行為を処罰しており、上記の法条項に規定された児童·青少年利用わいせつ物の定義についてアチョン法第2条第5号は、「児童·青少年または児童·青少年として明らかに認識することができる人もしくは表現物が登場して」法が定めた性行為をする内容を表現する映像物と規定している。

2)アチョン法の目的規定と改正の沿革
アチョン法第1条は、「この法律は、児童·青少年を対象とする性犯罪の処罰及び手続に関する特例を規定し、被害児童·青少年のための救済及び支援の手続きを用意し、児童·青少年を対象とする性犯罪者を体系的に管理することにより、児童·青少年を性犯罪から保護し、児童·青少年が健全な社会の構成員として成長できるようにすることを目的とする。」と規定している。
沿革的に、当初の旧アチョン法(2011915日法律第11047号に改正される前のもの)第2条第5号では、児童·青少年利用わいせつ物を実際の児童青少年が登場するものに限定していたが、2011915日に改正され、「児童青少年として認識することができる人もしくはは表現物」の部分が追加され、その後、20121218日法律第11572号全部改正され、「明らかに児童青少年として認識することができる人また表現物」として再び制限された。
上記のようなアチョン法の目的規定と改正の沿革を見ると、現在のアチョン法は、わいせつ物の製作過程において、実際の児童·青少年の性が直接的に搾取されるのを防止する他にも、児童·青少年の性を間接的な側面での利用より保護することも、その目的としていると判断される。

3)この事件法律条項の多義性及び違憲的要素
このように、仮想の表現物にまでアチョン法の適用対象にして以下のように加重処罰をし、身分上の不利益を加える各種の付随処分をするようにした立法の妥当性について議論の余地がないわけではないが、立法者の決断によって上記のような表現物にまで処罰対象を拡大したこと自体がすぐに法律の目的の正当性が欠けているもの、あるいは立法の裁量を逸脱するものとし、違憲の法律条項と断定しかねる。
しかし、一方で、この事件法律条項に内在している以下のような違憲的要素を考えると、この事件法律条項には、罪刑法定主義に反して処罰範囲が恣意的に拡大されかねない危険性が常に存在しており、それによって結果的に人間の想像力の自由を萎縮させることで、憲法上の基本権である表現の自由を深刻に毀損する恐れがあるということも否定しかねる。その違憲的要素とは、次のようである。
① まず、「児童·青少年として明らかに認識することができる表現物」という法文自体が非常に主観的かつ曖昧で、表現しようとする人に処罰の対象となる表現の自由の限界の基準を提示できずにいる{例えば、アニメーションにおいて、児童·青少年に関する認識の基準をアニメーションのキャラクターの外的形態だけで判断するか、ストーリー上に表示された設定などで判断するか、アニメーションによく登場する半人半獣あるいは妖怪のような想像のキャラクターにも同じ基準を適用するか、性的な表現が避けられない歴史的な出来事や神話や春香伝のような古典を原作とした表現物についても同様の判断を適用するかどうかなどについては、この事件法律条項だけでは、その基準を全く知ることができない}
② 次に、情報通信網利用促進等に関する法律上、一般的なわいせつ物を流布した罪については、その営利目的の有無にかかわらず、1年以下の懲役または1千万ウォン以下の罰金刑に処するのと比べ、アチョン法の児童·青少年利用わいせつ物を流布した罪は、7年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金刑に処しており、ここに営利目的が加わる場合には、法定刑は10年以下の懲役のみである。さらに、児童·青少年利用わいせつ物を流布した罪については、再犯防止に必要な受講命令または性暴力治療プログラムの履修命令を必要的に併科するようになっており(アチョン法第21条第1項)、有罪判決が確定した場合、個人情報が登録されて20年間保存·管理され(性暴行犯罪の処罰等に関する特例法第42条)、刑の執行の終了日または執行が猶予·免除された日から10年の間に児童·青少年関連施設などに就職することができない制約も加えている(アチョン法第56条)。また、特別な事情があると判断される場合を除いては、上記の登録期間中に、情報通信網を通じて個人登録情報を公開するための命令を宣告するようにしている(アチョン法第49条)。これらの法体系の下で、アニメーションのような純粋な仮想の表現物を何の制限もなく、児童·青少年利用わいせつ物に含ませて解釈する場合、犯罪と刑罰との比例関係を認めることができず、非難可能性に格段の差がある行為類型について裁判官が差別的な処罰を下すことにも限界がある。【本文註1:これらの不均衡は、児童·青少年利用わいせつ物の制作等を処罰するアチョン法第11条第1項で際立つ。即ち、上記の条件は、上記の行為をした場合、無期懲役または5年以上の有期懲役に処するようになっているが、何の制限もなく、児童·青少年に関するアニメーションをすべて「児童·青少年利用わいせつ物」に含まれるという解釈をした場合、自分のノートに児童·青少年が性的行為をする漫画や絵を想像して描いたり、スケッチすることも児童·青少年利用わいせつ物制作として認められる可能性がある。】

4)合憲的法律解釈[訳者注釈ii]の必要性
法律の規定が多義的なので、一方では合憲的な解釈が、他方では違憲的な解釈が全部可能となるのなら、憲法と合致する解釈を選択しなければならないものであり、その合憲解釈が不可能な場合には、憲法裁判所に違憲提請をしなければならない[訳者注釈iii]
察するに、以下のように、アチョン法で定められた児童·青少年利用わいせつ物の中で、表現物について比例原則と厳格な解釈をもって合憲性を維持する合憲的法律解釈が可能であると判断されている以上、違憲提請をせず、合憲的法律解釈でこの事件法律条項を適用する。

5)具体的な解釈論
上記から検討してきたように、アチョン法の立法目的、改正沿革、法規範の体系的構造などを総合的に考慮し、合憲的解釈論によって考えると、児童·青少年利用わいせつ物としての表現物は、実際の児童·青少年が直接的または間接的に関与された場合にのみ、児童·青少年として明らかに認識することができるものと解釈するのが妥当である。そのような場合に該当するものと想定することができる具体的な例を挙げてみると、次のような場合である。
① 表現物の制作において、実際の児童·青少年が参加した場合(例えば、表現物のモデルなどで直接参加した場合)
② 表現物の制作において、実際の児童·青少年が参加していないが、実際の児童·青少年が参加したかのように操作された場合(例えば、パソコンを利用した合成などの方法で、実際の児童·青少年の写真などを加味して表現物が製作された場合)
③ 表現物の制作において、実際の児童·青少年が参加するか、参加したかのように操作されていないが、画像やストーリーなどによって実際の児童·青少年が特定できる場合(例えば、アニメーション上の画像やストーリーなどにより、実際の児童·青少年が特定され、その児童·青少年の人格権が侵害されている場合)

6)この部分の公訴事実に関する判断
この事件に戻って検討したところ、提出された証拠によるとこの事件アニメーションは幼く見える姿をした仮想の男女のキャラクターたちが学校、家庭または他の場所で性的行為することを内容としている事実を認めることができる。
しかし、さらに検察が提出した証拠だけでは、① この事件のアニメーションに登場する各キャラクターを制作するにあたって実際の児童·青少年が参加したか、② 実際の児童·青少年が出演したかのように操作がされたか、③ ストーリーなどを通じて各アニメーションのキャラクターが実際の児童·青少年に特定されたと認めることができず、その他、この事件のアニメーションの各キャラクターが、実際の児童·青少年が直接的または間接的に関与されたことによって明らかに児童·青少年に認識することができる表現物に該当すると認めるに足りる証拠を発見することができない。

結論
結局、この部分の公訴事実は、犯罪の証明がない場合に該当し、刑事訴訟法第325条の規定によって無罪を宣告しなければならないが、予備的公訴事実の情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律違反(わいせつ物流布)の罪について有罪と認めた以上、主文で無罪を宣告しないことにする。


無罪部分2
被告人4、被告人5 株式会社の各児童·青少年の性保護に関する法律違反(わいせつ物製作·配布など)幇助の点(犯罪事実第45項の中で、この事件アニメーションに関する主位的公訴事実の部分)

公訴事実
1)被告人4は、被告人1、2、3が、上記の「無罪部分1」の「公訴事実」項のように児童·青少年利用わいせつ物をこの事件サイトの秘密クラブに投稿して配布しているという事実をよく知っていながら、これを支援するために、従業員たちと一緒にわいせつフィルタリング及びモニタリングで検出されたわいせつ物に対する遮断措置を行わず、秘密クラブへの参加促進、ポイントの現金両替などの行為をすることによって、彼らのわいせつの配布行為を幇助した。
2)被告人5 株式会社は、その代表取締役の被告人4が、上記のように業務に関連してわいせつ物配布行為を幇助した。

判断
幇助犯は従犯として正犯の存在を前提とするものであり、上記の「無罪部分1の「結論」項のように、その正犯である被告人1の行為に対して罪が成立しない以上、被告人4、5の幇助犯も成立することができない。

結論
したがって、この部分の各公訴事実は犯罪にならないものであり、刑事訴訟法第325条の規定によって無罪を宣告しなければならないが、各予備的公訴事実の情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律違反(わいせつ物流布)幇助罪については有罪と認め以上、主文で無罪を宣告しないことにする。


裁判官 シン·ウォンイル





[i] 訳者注釈1:日本の「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」に相当する法律です
[ii]  訳者注釈2:裁判所が法律の違憲的な解釈を避け、合憲的になるよう解釈することです。日本の「合憲限定解釈」と似た概念です
[iii] 訳者注釈3:司法審査型の憲法裁判制度を採用しているアメリカ、日本国と違って韓国には独立機関型の憲法裁判所が設置されており、韓国の憲法第111条によって法律の違憲審判は憲法裁判所の権限となっております。韓国の裁判所は、憲法裁判所に違憲提請する権限を有していますが、法律に関する違憲審判の権限は持っていません。この判決は違憲判決ではなく、裁判所がアチョン法の合憲的な解釈をした上で、この事件のアニメーションが児童ポルノに該当しないという判断をしたものです。

翻訳:パク・ドジュン(韓国弁護士)
原文はこちら


◆参考 日本製アニメ「おっぱいハート」より