2016年3月3日木曜日

「大阪市ヘイトスピーチ対処条例 解説講演会」


 3月3日に開催した「大阪市ヘイトスピーチ抑止条例解説講演会」にご参加下さった皆様と、講師の毛利透先生に御礼を申し上げます。


演題: 
 大阪市ヘイトスピーチ対処条例 解説講演会 

講師: 
 毛利透さん (京都大学法学部 教授) 
日時: 
 2016年3月3日(木) 14時~15時30分 
場所: 
 参議院議員会館 101会議室 


内容: 
 2016年1月に成立した「大阪市ヘイトスピーチ対処条例」について、大阪市の方策検討部会の委員として報告作成等に携わった京都大学法学部教授(憲法学)の毛利透さんをお招きして、条例検討のプロセスや、定義の絞り込み等の技術的な側面までを、特に表現の自由の保障との調整の部分を中心として解説して頂きました。 




 また、当日は、参議院法務委員会の与党筆頭理事の西田昌司議員と、野党筆頭理事の有田芳生議員にも御臨席を賜り、活発な議論が交わされたことを、大変嬉しく思っております。







(写真提供:永山薫)



■ 参考

2016年1月10日日曜日

なぜ過激なマンガを禁止することは児童保護へとつながらないのか

 米国コミック弁護基金(CBLDF)事務局長のチャールズ・ブラウンスタイン氏の意見書「なぜ過激なマンガを禁止することは児童保護へとつながらないのか」の邦訳を掲載します。

 この意見書は、国連人権理事会 児童ポルノ問題特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏による「過激なマンガの禁止」の提言に対する反論意見として、2015年12月16日にCBLDFの公式ブログに掲載されたものです。

原文: Why Banning Extreme Manga Fails To Protect Children

 ブラウンスタイン事務局長からは、「日本の皆様が、この意見書に興味を持って下さったことに、感謝を申し上げます。日本語訳の公開を、大変光栄に思います」とのコメントが寄せられています。

 




2015年12月16日
チャールズ・ブラウンスタイン
(米国コミック弁護基金 事務局長)

漫画は犯罪ではない

 最近のマスコミ報道は、国連特別報告者マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が、子供の性的虐待を食い止めるための日本への提案として「国が過激な児童ポルノを含む漫画を禁止すべきだ」と言及している点を強調していた。この提案は誤って解釈され、残念なことに彼女の価値ある努力 —実際の児童への虐待や搾取を終わらせる— という、より大きな実体から注意をそらす結果となった。

 ガーディアンやストレーツ・タイムズを含めたマスコミの報道を見ると、彼女の提案の大部分は漫画という観点の下に埋もれてしまっている。これは本当に残念である。表現内容に重点が移り、実存する被害者に対して影響を及ぼしている犯罪行為からは離れてしまっているからである。昨年、日本がついに—そして正当に—児童ポルノ所有者を起訴するためのこれまで延び延びになっていた法令を通過させ、児童への性的虐待の抑制に対し大きく前進していることをド・ブーア=ブキッキオ氏は認めている。しかし、この国にはいまだ長い道のりが残されている。ド・ブーア=ブキッキオ氏は国連報告書による批判の中で次のように指摘している。

・告訴が被害児童により行われない限り、虐待を調査、起訴する法の実施には消極的である。

・犯罪者に対しての刑罰が軽い。

・被害児童に対する適切な補助が不足している。

 上記の指摘とその他の重大な弱点が報告書内で特定されており、ここでこの報告書全体を読み解く価値が十分にある。残念なことに、表現内容を抑制すべきという提案を含めた事によって「描かれたファンタジー創造物」というテーマ周辺にマスメディアの関心を導いてしまい、実際の児童の搾取の過酷さや、それに対抗する日本の法律の構造的欠陥という問題から注意をそらす結果になってしまった。

 ド・ブーア=ブキッキオ氏は、この問題とバランスをとるべき表現の自由の問題がある点を認識しており、これに言及している。「私は成人のポルノに関して、という話であれば、表現の自由に関する議論の方が優勢であるし、重要だと認めます。」行き過ぎた表現内容を禁止すべきと彼女が要求したことの問題の一つは、「実際の犯罪行為の証拠写真」と、「描かれたイメージ」を同等に扱う間違いを犯していることである。もう一つは、小さくかわいらしいアートの表現手法や、「カワイイ」もの、可愛らしさを強調する日本文化の結果として、多くの漫画が「若年のキャラクターを描写しているかのように」西洋人の目には見えることである。

 しかし日本人にとって最も厄介な問題は、日本の法執行機関が表現芸術に対して専断的に起訴を執行する傾向がある、という点である。そのケースの一つがコアマガジン社の編集者たちの逮捕である。我々は、2013年にコアマガジン社の編集者3人が、日本のわいせつに関する法令の下で以前は認められていた範囲内の物品を押収された上にわいせつ図画頒布容疑で逮捕、起訴された件について報じた。コアマガジン社の編集者にとって起訴は突然の思いがけない出来事であり、有罪答弁を編集者たちが受け入れるという結果につながった。またこの起訴は、主流の出版業者や二次創作の同人出版の間で自己検閲の波が広く伝わる結果へとつながった。

 警察がコンテンツ関連の違反起訴に対し、公正明大さや透明性を重んじる姿勢を示していないことで、日本に於ける新しい規制は顕著な脆弱性を生み、自己検閲の方向へと推し進めることになるだろう。日本がド・ブーア=ブキッキオ氏の提案を受け入れることになった場合、より専断的な起訴が起こる可能性が高い。

 アメリカの読者は、なぜ非常に性的なコミックの内容、特に児童を描写している内容に対して反対する重要性があるのか問うてきた。こうしたコンテンツの内容はしばしばタブーに背き、非常に嫌悪を催す不快なものであるが、さまざまな理由からこれらを擁護する価値はある。

 第一に、コミックを告訴しても実際の児童性犯罪の被害者を保護しているわけではない点である。児童ポルノの定義に基づけば児童ポルノとは実在する人が性的虐待に巻き込まれた際の犯罪の写真証拠を指す。北米では、表現内容に関して起訴された人たちのいくつかの事例において、実際の犯罪行為も児童への虐待傾向もなかったことが明らかになったが、当局は未だに実際の虐待被害者ではなくそうした人たちを起訴することにリソースを割いている。誤った優先順位によって虐待被害者を保護すべき法行使のリソースがそらされ、結果的に実存する児童達を傷つけている。日本に関して言うならば、児童虐待防止法における著しい落ち度を正す努力を強化する代わりに内容検閲をさらに強化することを容認する事態になれば、虐待問題を解決する、というより緊急性の高い問題から焦点がそらされている、と言わざるをえない。

 第二に、欧米の道徳規範はグローバルなものではない点である。アメリカでは性的な内容を持つコンテンツはその大部分が写真の形で提供され、独創性や想像力を介さず内容を即物的に受け止める、描写内容と対象題材が直結するメディアである。18歳を超えた年齢のモデル達による写真により表現されたものであると指摘可能な事例であるならば、我々はこれら未成年者の性を扱うファンタジーの表現に対して法的、あるいは多くの場合、文化的な反対を唱えはしない。そのような例を探すのは難しいものではなく、ベアリー・リーガル・マガジンの毎号の内容を考えればいい。我々が反発するのは、これと全く同じファンタジーを「描いて」表現した際に、その対象が未成年に見える場合である。これは、写真の場合には実際に人物が参加しており、絵の場合には人物が参加していないという事実にもかかわらず、起こる問題である。

 日本では、状況が正反対に近い。性的な写真コンテンツも存在するが、性的な描写を持つ絵によるコンテンツの方がはるかに多く存在する。これは私が知的自由と漫画についての文化交流に参加するため東京に滞在していた時、性的に露骨な描写の内容を持つあらゆる漫画が一般的な大型書店で公然と販売され、普通の大人たちが購買していたことを目の当たりにしたため、事実である。実際、初めて新宿の官庁街近くにある漫画書店の紀伊國屋書店アドホックへ行った時、私は目を見張った。5階まであるこの漫画書店のうち、最上階は男性向け成人漫画専門、4階には女性向け成人漫画専門フロアとなっており、各階ではこれらの漫画が展示販売され、閲覧者に安全な場所であるよう職員が配置されていた。ディスプレイの仕方には、通常アメリカで同様のコンテンツを販売している小売業者に共通して見られる恥の目やいかがわしさは見られない。両方の売り場にあるコンテンツの被写体は、アメリカ人が写真や即物的な形で消費する性的な内容とそれほどひどく異なるものではなかった。しかしそうは言っても、描写によるコンテンツという性質から、写真手法で表すことのできる性的なコンテンツよりも多彩で想像的な種類の内容を生み出しており、欧米人が漫画に異議をとなえる多くの問題へとつながっている。

 この点は、我々を第三の問題へと導くものであり、おそらく最も重要な点である:「罪を犯す物語の表現」や「その消費」は、「実際に犯罪行為を行う衝動」と同じではない。これはアメリカでは確かめられた事実である。ベストセラーとなっているポルノコンテンツの内容や最も人気のあるポルノ関連検索用語と、それを消費する人々のセックスライフを比較すると、確かにそこには実生活上の行動と符合するものがほとんどないことに気付くだろう。これは日本でも同じ事実である。

 日本の漫画の性的表現に対して欧米人の判断を課した場合、しばしばその内容、製作者、消費者にまつわる微妙な意味合いを斟酌するのに失敗する。おそらく日本訪問で私が最も驚いたのは、「レディースデイ」にコミックマーケットへ行き、適切な事例を得たことである。「コミケ」の名で知られているコミックマーケットは、1年に2回、3日間にわたり行われる同人誌、自費出版漫画の巨大なお祭りである。1日に20万人前後がコミックマーケットに参加し、日ごとに出品者が異なる。3日間で35000の同人誌サークル—1人のクリエーターによるものから大勢のクリエーターの集まりによるものまで、数多くの出版者たち—が自費出版商品を陳列する。幅広い内容のものが販売され、ブランド化した人気漫画の模倣からオリジナルストーリーもの、大衆文化の様相に関するファン雑誌、そしてもちろん、非常に露骨な性描写のあるもの。私がコミットマーケットへ訪れた時、レディースデイ、メンズデイ、「よろずの」デイがあり、それぞれの日の出品者はこうした非常に幅広い読者グループに向けたコンテンツを販売していた。

 レディースデイに私がホールを歩いていると、ド・ブーア=ブキッキオ氏ならば児童ポルノ—幼い女の子が性行為におよぶファンタジーで、中には非常に年老いた男性を含むものもある—とみなすであろう内容のコンテンツを陳列する数列の並びに入り込んだ。それは、もし我々の事例の一つとして直面していたならば、私は顔をしかめつつもロバート・クラムが振りかざす不滅の屁理屈「それは紙に描かれた単なる線の集まりですよ、皆さん!」を引き合いに出し、防御に入ったであろう類のものだった。しかしとても啓発的だったのは、これらのコミックがたいていごく普通の、中年から年配の女性により販売されていたことである。これらのコミックの内容を知り、その著者と話をすると、これらのストーリーが犯罪行為や虐待を行う誘発要因でないことは明らかで、著者や読者の想像上の人生を反映させ、ファンタジーやロールプレイングの一形態として表現されたものだったのである。

 漫画は想像力のための安全な空間として機能している。漫画の形をとることで声を発する幅広い種類の性的なファンタジーが現に存在し、中には疑う余地もなく不穏で不快なものもある。しかしそれらは現実ではなく、実在する人々を傷つけているわけではない。こうした漫画の創作と消費に対して法的なリソースを割いたとしても、実在する人々を保護する手助けにはならない。そしてド・ブーア=ブキッキオ氏が指摘するように、保護を必要とする人々が実在する。残念なことに、メディアの話題はそうした人々に焦点を置いていなかった。漫画に焦点を置いていたのだ。それは危険にさらされている実在の人々を助けることから注意をそらす、残念な成り行きである。



皆様へのお願い
今後も「表現の自由」に関する各種資料の翻訳を継続するために、皆様からの寄付を必要としています。クレジットカード、コンビニ支払、銀行振込、ゆうちょ振替で簡単に決済できますので、ぜひ御協力くださいませ。


2015年12月15日火曜日

韓国訪問に関して

 11月22日から25日にかけて韓国ソウルを訪問して、著作権及び非実在児童ポルノの関連法制について各界との意見交換を行いました。


(韓国国会の本会議場にて)

 山田太郎 参院議員 (MANGA議連事務局長代行) から、マンガ規制が実際に施行された場合にどういうことになるのか実態を踏まえて考えたいとのお申し出があり、うぐいすリボンと以前から交流のあった韓国の国会議員やNGO関係者などを紹介させて頂いた次第です。




関連記事:

◆ 韓国でのマンガ・アニメ・ゲームの表現の自由調査結果資料(山田太郎事務所)
 http://taroyamada.jp/?p=8347

◆ ウェブマガジン:MANHWAIN  (韓国語)
 「日本の山田太郎 国会議員 訪韓 - アチョン法、著作権改正に関連した調査のためオープンネット訪問」
 http://manhwain.com/xe/article/5249

2015年8月14日金曜日

韓国弁護士連合会の声明

韓国弁護士連合会の声明
http://www.koreanbar.or.kr/notice/board04_list.asp


著作権法第140条の早急な改定を求める

[성명서]저작권법 제140조의 조속한 개정을 촉구한다

1957年に制定された著作権法は、権利侵害の救済方法に関して民事的な方法を優先しながら、刑事的には、被害者の告訴がなければ処罰することができない親告罪とした。

しかし、2006年著作権法の改定により、いくつかの著作権侵害行為が非親告罪化された後、第3者による著作権関連の刑事通報が急増し、善意の被害者が量産されているのが実情である。

一般的な犯罪とは異なり、著作権の場合には、権利を侵害された被害者は、損害賠償を受ければ処罰を望まない場合が殆どであることから、著作権者の意思に反して捜査が行われたり、第3者の告訴する権利を認めることは、著作権制度の意義と著作権の人格権的性格にも合致しない。

国会は、いくつかの団体が国家刑罰権を悪用して、多数の善意の被害者を量産する現実を直視して、一刻も早く著作権法140条に規定された非親告罪の規定を親告罪化すべきである。



2015.7.20

2015年6月21日日曜日

【賛助会員募集】

平成26年度分の事業報告等を公開しました。
特定非営利活動法人うぐいすリボンは、今年度も日本財団から情報開示レベル5つ星(最高)の評価を得ることができました。
http://fields.canpan.info/organization/detail/1500866312

賛助会員を募集中です。「自由な社会」と「豊かな文化」を次の世代に遺すために、ぜひ活動に御協力くださいませ。
http://kessai.canpan.info/org/uguisumembers/



2015年6月20日土曜日

「同人誌調査員」の委託業務に関して

【6月20日・追記:結果について】

「同人誌調査員」として選抜された方には、6月20日に、研究主宰の白田秀彰先生から、調査票に記入したメールアドレス宛ての通知が発送されました。残念ながら選ばれなかった方には、特に連絡等はございません。応募者の方は、各自メールをご確認下さいますよう、よろしくお願いいたします。


【5月24日・追記】 調査員の応募は定員になりました。キャンセルで空きが出る可能性があります。



 法政大学の白田秀彰先生が、著作権とキャラクター表現の問題について研究するために、「同人誌調査員」を一般から募集されるとのことです。


 6月14日に説明会を開催しますので、夏休みに研究調査のバイトをしたい学生さん等は、ぜひご参加くださいませ。


業務期間:

8月24日~9月12日間の図書館開館日のうちから任意の3日間を選ぶことが可能です。
ただし、図書館側との調整で期間が少々変動することがありえます。

勤務場所:

明治大学 米沢嘉博記念図書館 (御茶ノ水)です。

業務内容:

指定されたマンガ同人誌を読んでキャラクターの類似性の判定を行い、指定されたチェックシートに記入していただきます。

報 酬 :

マンガ同人誌一冊すなわちチェックシート一枚当たり1000円。一人当たり40冊程度割り当てとなりますので、40000円前後となります。
具体的な割り当て数には変更がありえます。
また、上限付きですが、自宅とお茶の水間の公共交通機関利用での交通費も支給されます。

研究主宰:

白田秀彰 (法政大学社会学部 准教授)

事前選抜:

採用のための事前選抜を6月14日(日)の18時30分から「文京スカイホール」にて開催します。
調査員志願者は、この事前選抜に参加して下さい。配布する調査票に記入をして頂きます。(拘束時間30分程度)
事前選抜に参加して下さった方には、採用・不採用に関わらず、薄謝として1000円を支払います。

持参するもの: 

マークシート記入用鉛筆 / 領収書記入用ボールペン等 / 印鑑を準備してください。(印鑑を持たない方もサインで対応できます)

2015年6月14日日曜日

「マンガ・アニメ・ゲームキャラクターの人物表現における類似判定に関する調査」報告会

 2015年6月14日に開催した「マンガ・アニメ・ゲームキャラクターの人物表現における類似判定に関する調査の中間報告会」には、著作権や同人文化に興味をお持ちの方を中心に約70人が参加して下さいました。また、同時に開催した「同人誌調査員」の選抜会にも多数の方が応募して下さいました。参加者・応募者の皆様に、この場を借りまして、御礼を申し上げます。


報告者:白田秀彰 (法政大学社会学部 准教授)

(写真提供:マンガ論争編集部)


日時: 2015年06月14日(日) 18時30分から
場所: 文京シビックセンター26階・スカイホール

内容: 
 著作権のあり方とキャラクターの表現の類似性の問題について、調査研究を行っている法政大学の白田秀彰准教授をお招きして、現在行っている実証研究の中間報告をして頂きました。 



【報告者:白田秀彰氏より】
 マンガ・アニメ・ゲームを主題とした二次創作同人誌は、一般的な認識として、何らかの形態で著作権を侵害しているものと評価されている。こうした一般的な認識があるため、法の改正や侵害規定の変更で、取り締まりが強化されるという懸念を生んでいる。たとえばTPPに伴って非親告罪化されれば、著しく取り締まりが強化されるといった主張である。 

 ところが、著作権の判例や学説をみると、著作権の侵害は、特定の部分ではなく全体的な類似性で評価されるべしとされており、あるいは創作性のある部分のみが保護され、事実の記述や平凡な表現が類似していても侵害ではないとされている。また、画風や作風は保護の対象ではなく、具体的な表現ではないアイデアもまた保護の対象ではないとみるのが通説である。 

 すると、二次創作同人誌は、原作から逸脱した物語に原作とは別の構図やポーズの絵を組み合わせて制作されているのだから、そもそも著作権を侵害したことにはならないと考えるべきである。しかし、そのように一般に認識されていない理由は、原作の「世界観」や「キャラクター」を用いているからであると考えられる。ところが「世界観」はまさにアイデアであり、これを著作権で保護することは困難であろう。また「キャラクター」については著作権の保護が及ばないことが通説である。とすれば、二次創作同人誌は本質的に著作権侵害にあたらないことになる。 

 この問題点に気が付いている一部の実務家や研究者は、絵画表現としての「キャラクター」に対して著作権の保護を及ぼすべきことを主張している。その立論には一定の説得力があると考える。とはいえ、それは原作の「キャラクター」を用いた場合である。二次創作同人誌で描かれている「キャラクター」が、そもそもオリジナルと似ていなければ、「原作へのアクセス」と「原作との類似」で侵害となるとする著作権法の原則から考えて、侵害に当たらないと考えるべきだろう。 

 こうした問題意識を背景にして、2012年から2014年まで、一般の人がマンガ・アニメ・ゲームキャラクターの人物表現に対して、どのように「似ている・似ていない」を判定し、またそれはどのような傾向を持つのかを調査してきた。その結果、調査用に準備したキャラクターのイラスト群に対して、一般的な傾向が存在することが明らかになった。2015年では、この一般的な傾向と合致する類似判定を行う調査員を10名程度集め、さらに類似判定に関する調査を継続する予定である。 

 本報告会は、2014年までの研究の成果概要について報告し、関心のある諸氏と意見交換し、また、2015年調査のための調査員選抜のためのアンケートを実施することを目的としている。性質上、アンケートは報告会に先だって行われる。拘束時間は30分ほどを予定している。このアンケートには謝金が支払われる。一般的な類似性判定傾向をもつとして選抜された被験者には、調査員として業務の委託を依頼する予定である。この業務の期間は、8月24日~9月12日のうち任意の三日を予定している。 (白田秀彰)


参照:
 コンテンツの創作・流通・利用主体の利害と著作権法の役割