2012年8月30日木曜日

「僕の愛する日本 ~翻訳家シモン・ルンドストロームさん講演会~」

 2012年8月13日のNPO法人うぐいすリボン主催「僕の愛する日本 ~翻訳家シモン・ルンドストロームさん講演会~」にお越しくださった皆様、ありがとうございます。

 当日はコミケ最終日翌日の暑い中、約80人の方が受講して下さいました。

日時:8月13日(月) 13:00〜14:30
場所:文京シビックホール3F会議室

内容:
 日本のマンガ・アニメの質の高い翻訳で世界的に知られる翻訳家のシモン・ルンドストロームさんをお招きして、日本文化の魅力をうかがうとともに、シモンさん自身が刑事訴追を受け、後にスウェーデン最高裁判所で無罪判決を勝ち取った、「マンガ規制」の問題を通じて、海外における日本のマンガ・アニメに対する誤解や偏見の問題を考え、表現の自由と文化の多様性の大切さについてお話し頂きました。

講師:シモン・ルンドストロームさん
1973年生まれ。翻訳家として日本の漫画・アニメ作品を数多くスウェーデンに紹介してきた。
代表的な翻訳作品に、『鋼の錬金術師』『ワンピース』『NARUTO』『名探偵コナン』『らんま1/2』など。

主催:NPO法人うぐいすリボン
協力:マンガ論争コンテンツ文化研究会、NPO CCC 





 今回の講演では、

① スウェーデンにおいても、実在しない架空のキャラクターの性描写を児童ポルノとして禁止することには異論が根強く、ルンドストローム氏の訴追に、新聞・テレビ・ジャーナリスト団体・文化団体等の大多数が反対したこと。

② スウェーデンにおける児童ポルノ禁止法が、社会的合意形成を重視するスウェーデンの通常の立法過程とは異なり、ジャーナリスト団体や芸術団体からの反対意見を無視するなど、一部の規制推進団体と政治家だけが結託して不透明な政治プロセスの中で決められたこと。

などが、ルンドストロームさんから語られました。

 刑事裁判の被告人という立場にありながら、ルンドストロームさんが希望を見失わなかったのは、スウェーデン国内のマスコミや市民団体のほとんどが味方をしてくれたからだということです。


講演の模様と、ルンドストロームさんへの質疑応答を、ニコ論壇でご覧いただけます。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv103253596

判決の日本語訳

スウェーデン最高裁の無罪判決の日本語訳はこちら。
https://docs.google.com/open?id=0B2oe5NKv_0gdV2pzUF9oUTZuMnM
スヴェア控訴裁判所の有罪判決(最高裁により破棄)の日本語訳はこちら
https://docs.google.com/file/d/0B2oe5NKv_0gdWTdaM2hKZUFJTmM/edit


その他参考資料

国立国会図書館 外国の立法 255
「スウェーデン最高裁における非実在児童ポルノ所持無罪判決」


判決の解説記事(アニメの放送局に関するブログ)
http://ahkb22.blog112.fc2.com/blog-entry-437.html

AFP通信の記事
【スウェーデンで「非実在青少年」裁判、マンガ翻訳家が児童ポルノ罪に問われる】
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2878341/8953973

日刊サイゾーの記事
【「東方のクリアデータを返せ!」スウェーデン<マンガ“児童ポルノ”裁判>元被告が悲痛な訴え!】
http://www.cyzo.com/2012/07/post_10946.html




 講演会終了後の懇談会で、シモン・ルンドストロームさんと語り合う佐久間美紀子さん(元・静岡市図書館司書)、藤本由香里さん(明治大学准教授)。

 話題は、スウェーデンの児童文学作家のアストリッド・リンドグレーンが亡くなった時に、ストックホルム市内が深い悲しみに包まれて静まり返ったことや、 スウェーデン系フィンランド人の作家トーベ・ヤンソンが『ムーミン』で描いた「北欧の孤独」とはどんなものか、といった文学論に始まり、スウェーデンの 図書館制度がどうして充実しているかや、スウェーデンにおける著作権についての考え方まで、実に多岐に。
「表現」の大切さを巡る話は、何時間も尽きませんでした。