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マリア・アブラハムソン 国会にて
良いマンガ判決だったが、最高裁の判決は奥歯に物が挟まったようであった。
2012年6月15日(金)11:09
「児童ポルノ犯罪が、絵に描かれた児童に対するものだった場合、規定をどのように解釈すべきか、審理をお願いします」
それが、アニメ研究者及びマンガコレクターであるシモン・ルンドストロム氏に対しスヴェア高等裁判所が下した有罪判決に関する、検事総長から最高裁への要請でした。
1年近く経ち、今朝その判決が下りました。 「最高裁判所はいわゆる漫画裁判において、被告に無罪を宣告する」 (しかし検事総長の質問に対する回答は避けました)
無罪判決となって良かったと思います(その理由に関しては、既にこちらで説明してあります)。
それにしても最高裁の考え方には疑問が浮かびます。最高裁は、児童ポルノ規定は実際に児童が写っている写真に対してのみ適用すべきであり、描かれた絵に対して適用してはならない、と言うべきでした。その方が端的かつ簡潔であり、分かり易かったでしょう。しかし最高裁は、複雑な比例原則等を持ち出し、日本における漫画の伝統や絵の芸術性等を考慮するようにと述べています。それは最終的に、この裁判において憲法上の表現の自由が重視されたという論点で決着を付ける為でした。
現実的には、今後ポルノ的な状況が描かれている児童の絵が問題になった時、今回の判決は、判例としては甚だ価値が低いと言わざるを得ず、残念です。表現の自由及び情報の自由を守る為、描かれた絵は児童ポルノ法の対象にはならない、と最高裁は明言できたはずでした。文章におけるフィクション上の児童は、そのような扱いを受けているのですから。しかし最高裁はそれを避けました。
何故、それをしなかったのでしょうか?
はっきりとは判りませんが推論としては、法改正予備業務の資料に、描かれた絵は写真と同等であると明記されている以上、最高裁は法律に対して、そこまではっきりとは反発したくなかったのでしょう。
つまり、この法律の根底にある“全ての児童に対する侮辱”という考え方は、描かれた人物をも対象にしている事になります。
最高裁判事が「描かれた絵は児童ポルノ法の対象にはならない」と明言した場合、法律を否定した事になるだけではなく、法律審議会においてこの法律を承認した高い地位の法律家である同僚の判断をも否定する事になります。 従って、この裁判に関しては、状況があまりにも特殊な為、絵を描いた人物には、児童ポルノ犯罪の有罪宣告は下されないということになりました。
このような形で最高裁は、その複雑な立場から何とか自分達を救い出したような気になっているのですが、法律が間違っているとはっきり断言する勇気はないのです。従って349人の立法者の一人である私が、児童ポルノ法が絵画を対象とはしないように、法律を改正しなければなりません。
今後の議論は面白くなるでしょう。法律上の観点から見ると、今回の無罪判決は、有罪判決となった場合と同等に興味深いものです。スヴェア高等裁判所は、今回の漫画絵は明らかに犯罪にあたると判断していたわけです。
高等裁判所判事の意見は、未だに変わらないのでしょうか?