2013年7月4日木曜日

韓国記者懇談会における代表荻野の発言要旨

 韓国の表現の自由の擁護団体Opennetさんと、7月2日にソウルで記者懇談会を行いました。代表の荻野の発言の要旨を公開します。


【うぐいすリボンについて】

 記者の皆様、本日はありがとうございます。
日本から参りました、NPO法人うぐいすリボン代表の荻野幸太郎と申します。
うぐいすリボンは、表現の自由の擁護を目的とする団体です。
本部は静岡県で、会員数は200人程度です。

 具体的な活動としては、啓発、それから政策提言を行っております。
 これまで、「図書館の自由」「著作権と表現の自由」といったテーマに取り組んできました。

 私たちの団体が、この漫画・アニメの規制に関する問題に取り組んでいるのは、これが「表現内容規制」であるからです。これはとても重大な問題です。
私たちは、この問題についての講演会などを日本全国の主要都市で開催してきました。



【日本の児童ポルノ禁止法改正案について】

 日本では、衆議院に児童ポルノ禁止法の改正案が提出されています。審議はこれからです。
 法案については、皆さん資料をお持ちですね?

 ここの附則の部分で、漫画・アニメを規制することをこれから3年をめどに検討するという条項が設けられています。その準備として漫画・アニメと子どもの性被害の関連を調べるという項目も入っています。

 私たちは、漫画やアニメの規制については、フィクションの内容規制であることから、反対しています。日本では戦後、「猥褻」を除けば、フィクションを内容規制する法令はほとんどありません。この一線は越えてはならないと考えています。

 また、実在の問題とフィクションを混同することは、児童ポルノ禁止法の立法趣旨から逸脱し、法律論としておかしいので反対しています。児童ポルノを禁止することの目的は、あくまで実在する子どもたちを守ることだからです。

 規制の検討自体が萎縮効果を生み出すことも、私たちは懸念しています。3年後に燃やされてしまうかもしれない作品のために、誰が努力をできるでしょうか?

 また、調査をするといいますが、誰が調査をするのでしょう? どのような方法で調査をするのでしょうか? 公正な方法によって調査が行われる保障は一切ありません。この点からも反対しています。

 この法案については、漫画家の協会だけではなく、出版社の団体や、日本弁護士連合会も反対声明を出しています。

 私たちは、日本の児童ポルノ禁止法に先行してフィクションを児童ポルノとして取り締まっている韓国のアチョン法にとても注目しています。
 罰せられるべきでない人々が、この法律によって処罰されたという話を聞きました。
 このような法律の問題について、日本に伝えたいと考えています。
 また、韓国ではアチョン法に関して、憲法に抵触するのではないかという地方裁判所の判断が出ていますね。控訴裁判所では無罪判決もあったと聞きました。これらについても、日本に紹介したいと考えております。


【質問1
 日本でこのような法律が作られたことには、何かきっかけがあったと思うのですが?

【回答1
 1996年のストックホルム会議については、皆さんご存知ですか?
 この会議で日本の政府代表団は、日本は突出して児童ポルノが氾濫している国であると非難をされました。
 このような展開になったのは、ポルノ全般を規制したいと考えている日本のNGOが事前に根回しを行っていたからです。
 ところが、後から刑事政策の専門家が検討したところによると、どうも日本で突出して児童ポルノが氾濫していたというのは、事実ではないようなんですね。今となっては検証不可能ですが、どうやら非難の根拠となったものの多くは、成人の女性が出演している普通のアダルトビデオだったらしい。東洋人の外見は西洋人から実年齢よりも幼く見られる傾向があるので、それが児童ポルノと誤認識されたのではないかと専門家は指摘しています。

 この会議の後、日本では、急いで児童ポルノ禁止法を作ろうということになりました。
 この時に、法律家の多くは、実在の被害者を性暴力や人身売買から守ろうと考えた。
 ところが、もう一つ、別の考え方のグループがあって、彼らはポルノ全般を禁圧したかった。
この二つの考え方のグループに分かれてしまい、多数派形成に成功したのは、ポルノ禁止を目指す人の方でした。
 ラディカル・フェミニストと純潔教育を掲げる保守派というのは、普段は相対立することが多いのですが、このテーマでは一緒になった。普段は考え方が真逆な人々が、ここに集合してしまったんですね。

 そういう経緯があったので、日本の児童ポルノ禁止法は、法律家を排除する形で、規制をしたい議員とNGOだけが議論を進めてきました。あまりにもバランスがとれていない議論だと思います。
 日本では法律案は、普通、法律の専門家がしっかりと議論をするんですが、この法律に関しては、そのプロセスが無いんですね。
 うぐいすリボンが、法律家によるシンポジウムや講演会を何回も開催するのは、国レベルでの冷静な議論が行われていないからです。


【質問2
 非実在のポルノと性暴力に本当に関係はないんですか? 科学的な調査はした方がいいのではないですか?

【回答2
 人間が社会においてどのように行動を選ぶのか、そういう因果関係を科学的に証明することは、不可能であると言われています。
 ただ、日本の犯罪学者たちは、統計データから疫学的に考えて、漫画やアニメの性表現が増えたことによって、性犯罪率が増えているということは言えないと指摘しています。基本的に日本の犯罪率は低下を続けています。

 それと調査についてですが、調査を誰がするのか、どのような方法で行うのかについては、行政側が決定します。規制を推進したい人たちが、都合のよい見解を述べてくれる人に予算をつけて、都合のよい結果を出すことも可能です。公正な調査の保障はありません。


【質問3
 韓国でも法改正のために運動をしていますが、日本ではどのような方法で働きかけをしていますか?

【回答3
 ご存知のように、日本には世界的に著名な漫画家が数多くいます。彼らに発言の場を作り、政治家と面談する機会を設けることがとても効果的です。

【質問4
 韓国では、ポルノの問題について発言することに抵抗がある人がほとんどで、なかなかこの問題で協力してくれる人を見つけるのは困難です。日本ではどうやって協力者を確保していますか?

【回答4
 日本では知識人に漫画やアニメ、ゲームの愛好者がとても多いのです。ですから、それらを守るために行動をしようという人物が、各方面の重要な地位にある人の中にもたくさんいます。


【最後に一言】
 日本と韓国の共通点は、漫画やアニメが非常に多く流通しているという点です。
 ですから、それを規制すれば社会的に大きな影響があります。表現の自由を著しく制約し、罪のない人々が罰せられる危険も大きくなります。
現在のような間違った状況を正して、児童ポルノの禁止が、実在の児童を守る本来の趣旨に立ち返るよう、これからも国際的に協力をしていければと考えています。

皆様、本日は本当にありがとうございました。


・韓国のネットメディアの記事