2013年8月24日土曜日

ドイツ連邦最高(通常)裁判所 メールテキスト児童ポルノ事件判例

連邦最高裁判所 2013319日決定 (整理番号:1 StR)

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刑法第184b2項及び4

単に子どもに対する性的虐待を描写するメールが発信されたにすぎない場合は、刑法第184b2項及び4項に言う事実上もしくは実際上の出来事を描写する児童ポルノに該当しない。

児童ポルノその他の内容物の入手所持に関わる_(空欄)_刑事事件におけるアウグスブルク地方裁判所の判決に関する2013319日付連邦最高裁判所決定-整理番号1 StR 8/13- 。

連邦最高裁判所第一刑事部は、2013319日付で次のとおり決定する。


1.被告人の上告により、2012917日のアウグスブルク地方裁判所の判決に関し、
a)  被告人につき、その判決理由の事実関係II1の文面bにおける児童ポルノの入手所持についての有罪判決に関し、その判決は破棄される。よって、この点に関しては無罪とする。訴訟費用及び被告人の必要経費は、国庫がこれを負担するものとする。
b)  有罪判決の点では、児童ポルノを自己のために入手した被告人は、児童ポルノの入手所持に関わる複数事犯、又児童ポルノの所持に関わる複数事犯、更に3件の事実関係における青少年ポルノの入手所持に関わる複数事犯に関して有罪と認定された範囲で判決は変更される。
c)  自由刑合算に関する言渡の点では、刑事訴訟法第460条及び第462条に基づく全犯罪更には残余の上告費用に関し、司法上の追加決定が下されるとの条件を付して判決は取り消される。

2.上告の継続は、これを却下する。


判決理由:

1  地方裁判所は、被告人に対し、児童ポルノの自己のためにする入手に関し、このうち2件の事実関係における児童ポルノの入手所持に関わる複数事犯及び1020件の同一の事実関係における児童ポルノの所持に関わる複数事犯、加えて3件の事実関係における青少年ポルノの入手所持に関わる複数事犯に関して210か月の総合自由刑を言い渡した。

2  判決棄却の上告並びに手続法及び実体法違反に基づく被告人の上告は、事実に関する主張によって部分的な成果をもたらした。

A.

3  地方裁判所は、次のような裁定と見解を示した。

I.

4  被告人は、20108月から20118月までの間、Eメールを介して繰り返し児童及び青少年のポルノデータを他のインターネットユーザと交換していた。

5  2010822日並びに2010911日及び21日に、被告人は青少年のポルノを内容とするビデオ(判決理由の事実関係II3の文面aからcまで)並びに2010117日には児童ポルノを内容とするビデオ(判決理由の事実関係II3の文面d)を他のユーザに送信配布した。

6  被告人は、201171日から2011723日の間における未確定の日時に、共犯Hから同人の5歳になる息子の児童ポルノチックなヌード写真を2枚、Eメールで送付してくれるよう風変わりな依頼を受けた。被告人は、まずこれらの画像を自分のコンピュータに保存し(判決理由の事実関係II1の文面a)2011711日付けのHEメールで、ある友人の3歳になる子どもの露出したペニスを勃起させ、最初は被告人がその幼児に、次にその幼児が被告人を相手にオーラルセックス行為を行った様子を書き記した(判決理由の事実関係II-1の文面b)

7  2011819日に実行されたLにある被告人宅の家宅捜索で、様々な記憶装置に保存された児童ポルノと思しき内容の画像が総数812枚、並びに208本のビデオが発見された。これらは被告人が意図的及び意識的に保管していたものであった(判決理由の事実関係II-2)

II

8  地方裁判所は、被告人に対し児童ポルノの自己のためにする入手に関する判決理由の事実関係II-1の文面aについては刑法第184b41文に従い、児童ポルノ入手所持に関する判決理由の事実関係II-1の文面b及びII-3の文面dについては刑法第184b2項を、そして青少年ポルノ入手所持に関する判決理由の事実関係II-3の文面aからcまでについては刑法184c2項に従って有罪判決を言い渡した。更に1020件もの同一の事実関係における児童ポルノ所持という判決理由の事実関係II-2(刑法第184b42)について、被告人は有罪と言明された。

B.

9  被告人の上告は事実に関する争点に的を絞ったもので、判決文から読み取れるような部分的成果を収めた。その他の点については、刑事訴訟法第3492項の趣旨から上告は根拠なしとされた。

I.

10  判決理由の事実関係II-1の文面bにおける児童ポルノ入手所持に関する被告人の有罪判決は、客観的及び法律的な再検討を妨げるものではない。特に児童に対する性的暴行に言及のある1通のEメールで、刑法第184b2項の意味する「児童ポルノ」が受取人に提供されたとしている(下記1.)。しかしながら、被告人の送信した複数のEメールは児童ポルノ的な内容にもかかわらず、本規定の意味する「現実の」もしくは「リアルな」出来事をなんら含んではいないのであるから、刑法第184b2項の構成要件を満たすものではない(下記2.)。

11  1(Eメールの本文もしくは添付ファイルの形による) 児童ポルノを内容としたEメールの他者への電子送信に関して言えば、児童ポルノ所持の提供が刑法第184b2項の意味するところである(ベック社版オンラインコンメンタール刑法編のツィーグラー執筆第184b条備考12を参照。改正前刑法の第1843項については、すでにバイエルン最高裁判所の判例2000627日付決定-5 StRR 122/00NJW 2000,2911,2912-がある)

12  a) データ通信でEメールを送信する場合、その電子メッセージが-たとえ見過ごされることがあるとしても-受信者のメインメモリに到達した時点で入手所持の条件は満たされる(ライプツィヒ刑法コンメンタール、第12版のラウフヒュッテ/ロッゲンブック執筆の第184b条備考8、最低基準について。参照項目として改正前刑法の第1845項にいう伝播については、すでに連邦最高裁判所の2001627日付判決-1 StR 66/01、刑事事件における連邦最高裁判所決定集4755がある。キャッシュメモリに相当する点に関しては、連邦最高裁判所20061010日付決定-1 StR 430/06NStZ 2007,95も参照のこと)。しかしながら、その点の正確な見極めるには、送信者の目的が常態化していることを考慮することにある。刑法第184b2項にいうコンテンツと同一に扱われるのはデータメモリである(刑法第113)

13 もしEメールが-この場合のように-個々の受信者に送付されるだけならば、上告審の見解にもかかわらず、それは刑法第184b2項の運用に支障を来たすものではない。上告審によって関連付けられ、刑事事件における連邦最高裁判所決定集13375に掲載された連邦最高裁判所決定(連邦最高裁判所、19591222日付判決-3 StR 52/59)から、何か他の問題がもたらされたわけでもない。この判決は、改正前刑法第93条にいう宣伝の媒体にのみ関わるものであり、更に規範を保持する目的からして、この解釈内容が広く世間に周知されるべきことを求めている(連邦最高裁判所 上掲376ページ)。これに対して、とりわけ非公開の閲覧室や一対一関係での児童ポルノの取り扱いは、刑法第184b2項の犯罪構成要件に照らして罰せられるべきものである(ドイツ連邦議会議会文書 15/350 20ページ)

14  b) 児童ポルノ「コンテンツ」の容疑内容としては、原則として子どもに対する性的暴行が言葉でのみ叙述される描写も又問題である。画像表現上の「児童ポルノ」の捉え方を制約するものについて、それが例えば欧州連合の法的措置の基盤をなしている(20031222日付の子どもの性的搾取及び児童ポルノの撲滅に関する理事会枠組決定2004/68/JIの第1bを参照。2004120日付けEU官報 L 13/44及び備考3、並びに子どもの性的暴力及び性的搾取の撲滅及び20111213日付け理事会の枠組決定2004/68/JIの  差替えに関する欧州議会及び理事会指令2011/93/EU4620111217日付けEU官報L 335/12012121日付けEU官報l 18/7を参照)ほどには、連邦議会が意識的に取り組むということはなかった。むしろ連邦議会は、刑法第184b条に関して-かなり大雑把な-内容解釈に固執していたと言える(ドイツ連邦議会議会文書 16/9646 10ページ以下参照)。欧州連合の法的措置との関係における高い刑法上の保護水準の均一化が、立法権者の裁量に委ねられているのである。

15  2.しかしながら刑法184b条全体では、刑法第184b2項及び4項が処罰可能な所持や児童ポルノの入手所持を「現実の」もしくは「リアルな」出来事を描写するようなコンテンツに限定している。これによって、明らかに見せかけとわかる作品の収集が除外されるということになるのである(シェーンケ/シュレーダ編刑法第27版の第184b条備考11におけるレンクナー/ペロン/アイゼーレの解説、フィッシャー刑法第60版の第184b条備考13を参照)。単に言葉により実際に実行した犯罪行為を書き記しただけの被告人のEメールは、上記のような「現実の」もしくは「リアルな」出来事に該当するものではない。

16  a)もちろん、言葉による表現も又刑法184b2項に言う「現実の」もしくは「リアルな」描写に含まれ得るかどうかは、学術文献上異論の余地がある。

17 このことは、小説や詩のようなはっきりと見分けのつく「創作上のポルノ」ではなく、実際に起こった出来事をありのまま描写して文章化もしくは表現するテキストに対して部分的には肯定されるかもしれない((シェーンケ/シュレーダ編刑法第27版の第184b条備考11におけるレンクナー/ペロン/アイゼーレの解説を参照)。しかしながら文学においては、言語表現そのものが現実の出来事に結びつくとか、あるいはそのような出来事を参考にして創作されたという時には、刑法184b2項の刑法規定が適用されるという解釈が大方の見解とされる(ライプツィヒ刑法コンメンタール第12版のラウフヒュッテ/ロッゲンブック執筆第184b条備考11、ラックナー/キュール刑法第26版第184b条備考6、ベック社版オンラインコンメンタール刑法編のツィーグラー執筆第184b条備考6、フィッシャー上掲備考13を参照)。これを区別するとすれば、「再現」上で行われた性的行為が写真であるかのように描き出されるような場合のみであろう(ミューコ社版刑法第2版のヘルンレ執筆第184b条備考26)
18  b)刑法第184b2項の解釈としては、言葉によって子供を虐待する行為の描写が、「現実の」もしくは「リアルな」出来事を再現するものとみなされるべきではないということである。

19 例えば、その場で実際に体験した出来事が「引き合いに」出されるとしたら、とりわけ言葉による描写の場合でもある種のリアリティをもつことは容易に想像できる。それにもかかわらず立法史が明らかにしていることは、立法機関が重要法令の作成や「現実の」・「リアルな」という概念を導入するにあたって、それが言葉による描写に該当することなどありえないような別のイメージを抱いていたことである。

20  aa1993723日の第27刑法改正法(BGBI I, 1346ページ)により刑法184b2項の先行規定となった改正前刑法第1845項の犯罪構成要件では、「現実の」出来事を描写するようなコンテンツに対してのみ、二者関係での入手所持を罰するものとした。

21 法案(ドイツ連邦議会議会文書 12/3001 4ページ以下)理由として、児童ポルノ画像やビデオ(4ページ目)の蔓延、-具体的には-「児童ポルノフィルム、ビデオフィルム、写真もしくは生の録音(5ページ目)」が例として挙げられた。連邦政府はこれに補足を加え、犯罪の構成要件は「ビデオフィルム、映画もしくは写真を通じて現実の出来事が描写されているような場合に限定される」べきものでなければならないことを明確にした。これに対して、「児童ポルノ小説、イラスト及びアニメーション」の場合は、法の規定する処罰原因を満たすものとは見做してはいない。なぜならば、それらを所持することは子どもがポルノ画像の「出演者」として利用される恐れはないからである(ドイツ連邦議会議会文書 12/3001、付属書310ページ目)

22 連邦議会の司法委員会はなお審議継続し、犯罪組織やプロ集団の児童ポルノコンテンツへの関与という新たな限定的構成要件(改正前刑法第1844)に対しても又、「現実の」出来事を描写する(ドイツ連邦議会議会文書 12/4883 5ページ目)ような表現に限定するよう提言した。委員会は、改正前刑法第1844項の規定で増大した軽度の処罰を、「単なるイラストもしくは言語表現が職業的もしくは組織的に伝播する」場合にも適用されることを懸念して、上記の提言を正当化した。なぜならば、そうした事態の発生は「常態として子供の現実上の性的暴行と結びつかない」と考えるからである(上掲8ページ)

23  bb1997722日の情報サービス及び通信サービスのための大綱条件の規律のための法律(IuKDG)を介して行われた「リアルな」出来事の描写表現に関する改正前刑法第1845項の拡大解釈(BGBI I, 1870ページ)にしても、言葉による表現ということにまで入手所持の構成要件を拡大させはしなかった。構成要件の拡大は、むしろバーチャルな表示がますます亢進していく中で、証拠集めの困難を排除するのに役立っている。立法手続きの過程で、「デジタル画像処理技術の急速な進歩発展に関しては.....ほぼ完ぺきな仮想世界が生み出される」かもしれないことがはっきり強調された(ドイツ連邦議会議会文書 13/7934 31ページ)。率先排除の勧告決議の中で、最終論拠として次の事情が明確に取り上げられた。すなわち、「....とりわけデータネットワークにおいては、バーチャルシーケンスを踏まえた虚構の描写表現を締め出すことはできない」ということである(43号」に関する上掲41ページ、ただし本当は44)

24  cc)刑法184条以下の改正に当たって、20031227日制定(連邦官報I, 3007,3009[No.18])の性的自己決定に対する犯罪行為に関する規則の変更及びその他の規則変更についての法律(SexualDelÄndG)により、改正前刑法第1845項の入手所持に関する構成要件は、内容上の変更なしに新刑法第184b2(他者のためにする入手所持)及び第184b4(自己のためにする入手所持)に移行された。

25  d)入手所持の犯罪構成要件を画像表現と(生の)録音に制限することは、刑法第184b条の段階的な保護概念にもかなった方策である。これによって、あらゆる児童ポルノ及びそれと同等の表現(刑法第113)に関する何らかの活動(たとえば制作、配布)が刑事罰の対象とされる(刑法第184b1)が、ただし単なる入手所持は、「現実の」もしくは「リアルな」出来事を描写している場合に限られる(刑法184b2項及び4)。立法機関の承認の根拠となっているのは、あきらかにそうした表現描写を制作する目的で子どもを性的に虐待する方向へ指嗾する危険の高まりが、まさにその他の児童ポルノの表現と比べて、後者すなわち「現実の」「リアルな」に由来していることである(上記aa)

26 その他の点では、画像又はビデオ映像並びに生の音声録音の危険性がある。これは、暴力シーンが直接見る者の「目に飛び込んでくる」ということである。反応する習性のある人間にとって目から取り込んだこの刺激は、子どもを使ったシーンそのものが繰り返されることによって、たいていは消費者に直接的な印象を与えるので、たとえ描写やアニメーションもしくは小説が実際の出来事を引用し、読者、鑑賞者もしくは視聴者にとっては実際の出来事が間接的に繰り返されることになるとしても、それ以上に非常に偏った影響を与えることになりかねない。

27  e)法の透明性の要件も又、単なる言葉による叙述を「現実の」もしくは「リアルな」出来事の再現であると理解することに反対している。テキストで或る出来事を少なくとも「リアルに」再現するとすれば、こうした要件と区別される明確な一般的な基準を見出すことはほとんどできない。それゆえ言葉による描写が例えばその繊細さやスタイル-叙述形式あるいは明らかに虚構と分かる書き方-ゆえに、もしくは「リアルな」又は-先行した実際の暴行を証明する場合には-むしろ「現実」としての実在人物との関連ゆえに評価されるのかどうかは、それらの法的な把握がほとんど不可能なある種の全体像に左右される。刑法第184b2項及び4項によってはカバーされない明らかに虚構と分かる画像を用いたポルノ表現と、詳細を極めた「現実の」もしくは少なくとも「リアルな」ものとして評価されるテキスト表現の間の矛盾は更に脅威である。

28  3.こうした評価に基づいて、判決理由の事実関係II-1の文面bにおける被告人の有罪判決は破棄されるべきである。児童ポルノの内容を含んだEメールでの記述は、刑法第184b2項に言う「現実の」もしくは「リアルな」出来事を描写したものではないから、被告人は無罪とされるべきである。

II.

29 判決理由の事実関係II-1の文面bにおける一部無罪は、すべての自由刑の破棄を含むものとする。本刑事部は、本行為に対して下された1年の自由刑が残りの個別刑の総計に影響した点を除外する。しかし、地方裁判所がこれら個別刑なしに言い渡した210か月の全自由刑よりも軽度の刑を言い渡した場合はこの限りでない。

30 本確定は、法律上の瑕疵には左右されない。それゆえ確定は継続される。

III.

31 その他の件に関して、上告審の正当性に基づく判決の上告裁判所再審査は、有罪判決や執行猶予付き判決に関してではなく、被告人の不利益に関して一層の法律上の瑕疵を明確にしている(刑事訴訟法第3492)

32  1.上告審が取り上げた法定戒告は、連邦検察官の正当な理由を認め、これを無効のままとする。

33  2.手続き上の実質的な論点についても、同様に踏み込んだ判断をしない。

34  a)特に-連邦検察官が提出文書の中で正確に指摘した点に関し-判決理由の事実関係II-2にあるタブレットには、合計1,147件のデータファイル、それゆえ地方裁判所が結審した際の1,020件のデータファイルよりもファイル数が多く、それらのファイルに児童ポルノが内容として収録されていたという点については、被告人に見解に反論を申し立てない。

35  b)結論として、判決理由の事実関係II-3の文面aからcに関し、刑法第184c2項に基づく青少年ポルノ入手所持の有罪判決の根拠となったビデオデータ並びに児童ポルノの所持(判断理由の事実関係II-2)に関する有罪判決の根拠となる物品が下記の通りであった点を理由として被告人は反論を申し立てない。

36  aa)判決理由の事実関係II-3文面aからcにおける刑法第184c2項に基づく青少年ポルノ入手所持に関する有罪判決が、ビデオデータが青少年ポルノではなく児童ポルノのデータと判断評価される場合には、同様に被告人の見解に反論を申し立てない。理由は、刑法第184b2項の刑罰が厳しいからである。

37  bb)そのうえ、入手所持の犯罪構成要件(刑法第184b2項ないし第184c2)は、所持の犯罪構成要件(刑法第184b42文ないし第184c42)を除外する。このことは、行為が青少年ポルノもしくは児童ポルノの内容(データ)に関連している(連邦最高裁判所200984日決定-3 StR 174/09StV 2010, 194及び2008710日決定-3 StR 215/08, BGHR StGB 刑法第184b条の争点1)かどうかにかかわらず妥当する。

38  c)それに伴い、判決理由の事実関係II-3の文面aからcにおける有罪判決と並行する判決理由の事実関係II-2における児童ポルノの所持(刑法第184b4)に該当するこのビデオデータ所持(データNo.959)に関する被告人の有罪判決は当然違法である。しかしながら、これは又結果において被告人に対し判決理由の事実関係II-2における判決を取り消させるほどの要請を表現するものではない。

39  aa)本事件における有罪判決はこれを維持する。理由は、被告人はこれと同じ時期に大量の児童ポルノのデータを所持していたからである。もっとも同時期に多くの児童ポルノデータを所持していたと言っても-それらの数がどうであろうと-、それは刑法第184b4(連邦最高裁判所2008710日決定-3 StR 215/08, BGHR StGB 刑法184b条の争点1参照)にいう「一回の」所持である。地方裁判所は、被告人が同時期に所持していたデータの数量を判決の中で特に言及している。しかしながら、これはそこまで必要とされるものでない。それゆえ本刑事部は有罪判決を該当事実に合致する限りで変更してかまわない。

40  bb)この一本のビデオデータを問題としなければ犯罪件数が少なくなるにしても、判決理由の事実関係II-2における個々の判決は維持される。なぜなら、被告人が所持していた児童ポルノデータの多さに着目すれば、本刑事部は、地方裁判所がこのビデオデータに限り刑の配分を考慮せず、16か月よりも軽い個別刑を科そうとした点を不当とするからである。

V.

41 判決の取消並びに続いてなされる無罪判決の範囲において、訴訟費用並びに被告人の必要経費は国庫の負担とする。

42 なお上告費用の決定は、刑事訴訟法第460条、462条に基づく事後手続に委ねられるものとする。被告人は自身の上告をもって部分勝訴に到達したのであるが、特に刑事訴訟法第460条及び462条に基づくその後の手続における16か月足らずの自由刑のうち、刑全体の形成に資する個別刑に関して、自由刑全体の重要でなくはない縮小を結果し得たという事実が完全に取り消されたとは考えられない。それゆえ、被告人に(残余の)上告費用の全額負担を課す(連邦最高裁判所2004119日決定-4 StR 426/04 mwN, wistra 2005, 1871をも参照)ことは不公正であるので、重い法的責任は軽減されてしかるべきである。

(署名)
  Wahl        Rothfuß       Jäger         Cirener       Radtke



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