2012年10月22日月曜日

堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る

 10月14日の講演会「堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る」は、120人以上の方が受講してくださいました。
 講師の上野千鶴子先生、寺町みどり先生、御来場くださった皆様、後援をして下さった太田出版さま、まことにありがとうございました。



演題:堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る
日程:2012年10月14日(日)13:00~15:00
場所:日比谷図書文化館コンベンションホール

内容:
 堺市立図書館で2008年に起きたBL小説廃棄要求事件の際に、図書の排除に抗議して監査請求を行った上野千鶴子さん、寺町みどりさんをお招きし、事件について振り返っていただきました。

講師:上野千鶴子(東京大学名誉教授)
   寺町みどり(「ジェンダー図書排除」究明原告団・事務局)


 今回の講演会では、最初に上野先生から、

① 図書館から特定のテーマ・特定の著者の本の排除を要求する運動が全国的に発生している。

② 「ジェンダー」に関連した問題が、政治的にホットなテーマになってくると、それが一種の踏み絵のように機能して、「ジェンダリーフリー派」とみなされた人物の著書が、図書排除要求の対象となった。他にも従軍慰安婦の問題などで同じようなことが起きた。

③ それらの運動は、インターネットで最新情報やノウハウを拡散し、地方議員を使って図書館行政に圧力をかけるなど、無視できない勢力となっている。

と、堺の事件の背景にある、全国的な図書排除要求運動の概要解説があり、この事件に自分が積極的に関わることになった経緯が語られました。




 さらに問題点として、フェミニズムの内部が分裂しており、ジェンダー図書排除には反対していても、BLのような性表現を擁護することには批判的な意見が存在することも踏まえた上で、

「イマジネーションを規制してはならない」
と、創作表現規制への反対姿勢を、

「新しい歴史教科書だって、図書館から排除されてはならない」
と、価値中立的な「知る権利」の重要性を

「フェミニズムは敵ではありません」
と、ジェンダーの話題を怖がるオタクたちへのメッセージを、

印象的な言葉で語っていました。



【関連資料】

 堺市立図書館、BL本5500冊排除騒動の顛末 『創』5月号(上野千鶴子)

 『む・しの音通信』No.68(2008.12.5発行) 特集:「ジェンダー図書排除事件」

 堺市立図書館の5706冊の「特定(BL)図書排除リスト」
 (図書館から排除された「BL小説」には、性描写の全く無い作品も含まれていました)

 みどりの一期一会 「ジェンダー図書排除事件」

 上野千鶴子さんインタビュー「ポルノがレイプを煽ってはいません」






【寄付のお願い】
 今回の講演会の冒頭、上野千鶴子先生から、
「図書排除の問題で講演に呼ばれたことは、驚くことなかれ、今回が初めてです」
とのご紹介がありました。

 それどころか自治体によっては、上野さん自身が「歩く有害情報」扱いされていて、男女共同参画系のNPOが講演に呼ぼうとしても、行政からNGを食らって企画がボツになることが多いんだとか。
 その他の自治体でも、「ジェンダー」の問題が絡む論争的なテーマは避けられて、最近の講演依頼は「お一人様」の話題ばかりだそうです。

「うぐいすリボン」のように賛同者からの寄付金のみで運営されるNPOの強みは、こうした「外圧」を受けずに済むという点にあります。
 行政や特定企業への資金依存は、「論争的」であること自体をタブーとして封印することになりかねないというリスクを抱えているのです。
 うぐいすリボンは、「表現の自由」に関する各種啓発イベントを全国各地で開催しています。今後も活動を継続していくために、皆様からの支援が必要です。
 次の世代に「自由な社会」と「豊かな文化」を伝えるため、ぜひ御協力くださいませ。
http://www.jfsribbon.org/p/blog-page_5.html