2014年5月28日水曜日

韓国における漫画弾圧の歴史と、日本の今後

パク・ドジュン(弁護士)



 昨日(2014年5月27日)、韓国政府は漫画産業の成長を目的とする長期計画を発表しました。その計画には2016年までに漫画等コンテンツ産業へ1400億円の投資を実施、韓国のネット漫画(webtoonといいます)を各国の言語に翻訳して世界への配信、漫画をもとにした「one source multi-use」の活性化等という内容が含まれており、まさしく「国を挙げて漫画産業を成長させる」という表現が適切な国家的な大計画と言えます。

 ですが、その計画を見ている私の心境はとても複雑でした。なぜなら、現在の韓国の漫画の衰退を招いた原因は韓国政府と社会にあるからです。

 1972年、韓国では12歳の少年が自殺した事件が起こりました。言論界は少年が漫画の影響で「死んでもまた蘇ることができる」と信じて自殺したのであるという内容の記事を掲げ、大々的に漫画を非難しました。その事件以降、韓国政府は「青少年の育成に有害だ」という大義名分の下で漫画においての表現の自由はもちろん、ひいては韓国の漫画自体を弾圧し、それによって「不良漫画」と分類された20、000冊もの漫画が燃やされるようになりました。

 そのような政府と社会の漫画に対する見方-青少年に有害なもの-は変わらず続き、韓国の青少年保護法の施行によって多数の漫画家達が「児童の品性を著しく害する恐れがある図書等を製作した」という嫌疑で刑事起訴された事件も起こりました。その事件は6年間の裁判の末に問題の条項に対して違憲判断が下され、漫画家達に無罪判決が言い渡されました。

 1970年代より続いてきた政府と社会による漫画弾圧の結果、日本とは異なった特色を持っていた韓国の漫画の芽は完全につぶされました。その空白を埋めたのが当時不法的に輸入された日本の漫画で、日本の漫画が正式に韓国へ輸入されてから、 韓国の漫画は日本の影響を強く受けるようになり、 韓国の読者は韓国の漫画ではなく、日本の漫画を読むようになったのです。

 そして韓国の漫画家は日本でデビューしようとしたり、 生計の為児童向けの教育漫画を描くようになったりしました。

 それが、最近、大手インターネット検索サービス会社の「naver」等を通じて ネット漫画が流行り、それを原作にした映画などが人気を得るようになると、現在の政府と言論界は「次世代の韓流はネット漫画」などという美辞麗句を使って漫画を褒め称え始めたのです。

 つまるところ、韓国政府の発表した漫画産業の成長計画は1970年代よりの過ちを今になって正そうとしているだけということです。

 勿論、韓国漫画の衰退の原因には無断複製をはじめとする違法アップロードの氾濫もありますが、今までの韓国政府と社会の漫画に対する見方 -青少年に有害なものなので、規制しなければならない- が重要な原因のひとつであることは否定できないでしょう。

 最近、日本でとある漫画が東京都の青少年健全育成条例(新基準)によって有害図書と初指定されたという記事を見ました。 その記事を見た瞬間、私の頭の中をよぎったのは1970年代の韓国でした。 私は問題の漫画の内容を詳しくは知りませんので、それが青少年の育成に有害かどうかはわかりません。
 しかし、「青少年の育成に有害」というのは一見当たり前のように見えますが、 実は曖昧で恣意的に判断されがちな危険性を持っているものだと思います。 一度、その判断を過ると、正すまでに30年以上の非常に長い時間がかかるようになります。

 私は日本の最近の一連の動きによって日本が韓国の二の舞を踏むようになるのではないかと懸念しております。もし日本の立法者が1970年代の韓国政府のような判断をしたら、 30年後、日本の漫画は世界から忘れ去られてしまい、政府が漫画産業を成長させようとする計画を立てるかもしれません。

 そのようなことが起こらないよう、祈っております。

パク・ドジュン(박도준 PARK Do June) 

1982年生まれ。延世大学法学部卒業。弁護士(大韓民国)。
 ソウルを拠点に、マンガやアニメ等のいわゆる「非実在青少年」の性表現を理由に検挙された漫画家や翻訳家への、司法支援活動を行っている。

2014年5月20日火曜日

change.org での署名について

追記:
 2014年4月12日に始まったこのネット署名は、13,000筆以上を集め、同年5月31日をもって終了しました。


 署名サイトの change.org で、「児童ポルノではなく【児童性虐待記録物】と呼んでください」という署名の呼びかけが行われています。(呼びかけ人:廣田恵介 氏)
 現実の児童性犯罪の摘発を強力に推進し、実在する被害者の救済を適切に進めていくためにも、漫画等の創作物や普通の家族写真が取締り対象でないことを明確化することは有意義であると思われます。



 著名人も続々と賛同を表明し、署名人数はまもなく1万人を超えようとしています。

ゆうきまさみ (漫画家)
赤松健 (漫画家)
おがきちか (漫画家)
北崎拓 (漫画家)

森田崇 (漫画家)

東浩紀 (哲学者)
園田寿 (刑法学者)
金田淳子 (社会学者)

山口浩 (経済学者)
與那覇潤 (歴史学者)

会田誠 (画家)

開田裕治 (イラストレーター)

笹本祐一 (作家)
松沢呉一 (作家)
開田あや (作家)
盛田隆二 (作家)

高須力弥 (形成外科医)

http://www.change.org/ja/キャンペーン/衆議院-参議院の全国会議員721名-児童ポルノではなく-児童性虐待記録物-と呼んでください



参考:

◆ 大阪府青少年健全育成条例
 いわゆる児童ポルノ法では、児童ポルノを見る側の価値判断から定義しており、被写体となる子どもにとっては性的虐待や性的搾取が疑われる記録物であっても児童ポルノに該当しない場合があることから、大阪府では被写体となる子どもを守る観点から「子どもの性的虐待の記録」という新しい概念を構築し、これを製造、販売、所持しない努力義務を設けています。

◆ 国際刑事警察機構「適切な用語」
 性的虐待を受けて写真を撮られた子どもたちは、保護を受け配慮されるべきであり、受けた虐待の深刻さを「ポルノ」という言葉で矮小化してはならない。

2014年5月19日月曜日

ゲンとアンネと図書館の自由

 講演スライド「ゲンとアンネと図書館の自由」を公開いたします。
 このスライドは、2014年4月27日に開催された「第18回静岡県図書館交流会」での、NPO法人うぐいすリボン副代表:佐久間美紀子の報告を、一部加筆・修正したものです。

2014年5月16日金曜日

共催「児童ポルノ禁止法・院内勉強会」

児童ポルノ禁止法・院内勉強会

 コンテンツ文化研究会さんとの共催で議員会館で開催した「児童ポルノ禁止法・院内勉強会」には、平日の午前中にも関わらず、70人以上の方が参加して下さいました。

 講師の高山佳奈子先生と、会場の手配をして下さった阿部知子衆院議員、ご来場・ご祝辞を頂きました山田賢司衆院議員(自由民主党)、三谷英弘衆院議員(みんなの党)、山田太郎参院議員(みんなの党)に、心から御礼を申し上げます。




 今回の講師の高山先生は、実際の人身売買や性暴力への対応を重視する立場から、児童ポルノ犯罪への対策に取り組んでおり、「京都府児童ポルノの規制等に関する条例」の策定等に関わったことでも知られています。

講師:高山 佳奈子 (京都大学大学院法学研究科 教授)
日時:2014年05月16日
会場:衆議院第一議員会館 多目的ホール
主催:コンテンツ文化研究会
共催:特定非営利活動法人うぐいすリボン、女子現代メディア文化研究会