2012年10月30日火曜日

マリア・アブラハムソン議員

 スウェーデンの国会議員、マリア・アブラハムソン氏から許可を頂き、ブログの日本語訳を公開いたします。
 アブラハムソン議員は1963年生まれ。弁護士出身で、最大与党の穏健党に所属しています。
 マンガの取締りについて、表現の自由の侵害にあたるとの観点から反対を続けてきました。


アブラハムソン議員の公式サイト(スウェーデン語)


 うぐいすリボンからの協力要請を快諾してくださり、今回の翻訳について「とても光栄です!」とのメッセージを寄せてくださいました。


・検事総長でさえ、最高裁が漫画の子供と実際の子供は区別する事を望む (日本語訳)

・今日の最高の2人: エクスプレッセン(夕刊紙)紙上のホーカン・リンドグレン、及び教授との冬のおしゃべり (日本語訳)

・良いマンガ判決だったが、最高裁の判決は奥歯に物が挟まったようであった (日本語訳)



 うぐいすリボンでは、今後も、世界中から、表現規制に反対する政治家・芸術家・ジャーナリスト・法律家などの方々の貴重な発言を、日本語に翻訳して紹介していこうと考えています。


 皆様からの資金協力をお待ちしております。

日本語訳:ブログ : マリア・アブラハムソン 国会にて


ブログ : マリア・アブラハムソン  国会にて
良いマンガ判決だったが、最高裁の判決は奥歯に物が挟まったようであった。
2012年6月15日(金)11:09


「児童ポルノ犯罪が、絵に描かれた児童に対するものだった場合、規定をどのように解釈すべきか、審理をお願いします」

それが、アニメ研究者及びマンガコレクターであるシモン・ルンドストロム氏に対しスヴェア高等裁判所が下した有罪判決に関する、検事総長から最高裁への要請でした。
1年近く経ち、今朝その判決が下りました。 「最高裁判所はいわゆる漫画裁判において、被告に無罪を宣告する」 (しかし検事総長の質問に対する回答は避けました)

日本語訳:ブログ : マリア・アブラハムソン 国会にて


ブログ: マリア・アブラハムソン  国会にて
今日の最高の2人:エクスプレッセン(夕刊紙)紙上のホーカン・リンドグレン、及び教授との冬のおしゃべり
2011年12月30日(金)19時38分

明日は大晦日です。私達はヴァルムランド県にある冬用の別荘から、午前中出発し、“ピークの日々はとっくに過ぎた”ジープに乗って、大都市のスンネ(ヨーラン・ツーンストロムによれば世界の中心地だそうですが)にお正月の買い出しに出かけました。買い出しの内容は、アフトンブラーデット(夕刊紙)とエクスプレッセン(夕刊紙)、シャンペン、牛ヒレステーキ、カニ等。つまり債務危機が吹き荒れる中、新聞スタンド、冷蔵食品売り場、惣菜食品売り場に揃っている様々な品を買ったのです。 ( http://www.expressen.se/kultur/manga-skadar-inte/ )

先程買ってきたエクスプレッセンを、暖炉から差す灯りの中で読み終えました。その紙面には、ホーカン・リンドグレンが書いた、児童の絵と実際の児童に対する性的虐待を撮影した写真とを同等に扱う事の馬鹿馬鹿しさに関する論理的且つ興味深い記事が載っていました。
この混乱の元凶は、まさに魔女の醸造物である道徳の危機及び曖昧模糊とした考え方です。それが、漫画研究家のシモン・ルンドストロムが児童ポルノ犯罪により有罪判決を言い渡されるという、とんでもない状況に繋がりました。できれば来年の最高裁で、この間違いが修正されるか、それが叶わないならば法律を適切に改正するしかありません。私は以前から、この奇妙な裁判に注目していました。

スンネからフリークスダールス地域を抜ける帰り道、でこぼこした路上ではラジオチャンネルのP1、冬のおしゃべり、という番組に出演しているレイフ・GWペーションのスコーネ訛りが、缶の中の反響音のように響いていました。(我が愛車には申し訳ないが)
ペーション教授のその常変わらぬ近づきがたい雰囲気は、印象的でした。ペーションは、変わらないトーンで、考え深く、スリリング且つ情熱的に、警察の失敗談から、世界のトップテノール歌手のユッシ・ビョーリングの声に関する考察まで語る事ができる能力の持ち主でした・・・。
次回の買い出しでは、ユッシのCDを購入しなければ。

日本語訳:ブログ : マリア・アブラハムソン 国会にて


日本語訳
ブログ : マリア・アブラハムソン(スウェーデン国会議員)  国会にて
検事総長でさえ、最高裁が漫画の子供と実際の子供は区別する事を望む
2011年9月18日(日)14時01分


今週、検事総長は、いわゆる漫画裁判に関する考察をまとめました。検察官が有罪判決の下った裁判に関し、最高裁で上告を要求するなど、当然、滅多にある話ではありません。しかし今回、検事総長は、法の適用による指導を重要視し、最高裁で本件を取り扱うべきであると判断しました。 

2012年10月22日月曜日

堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る

 10月14日の講演会「堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る」は、120人以上の方が受講してくださいました。
 講師の上野千鶴子先生、寺町みどり先生、御来場くださった皆様、後援をして下さった太田出版さま、まことにありがとうございました。



演題:堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る
日程:2012年10月14日(日)13:00~15:00
場所:日比谷図書文化館コンベンションホール

内容:
 堺市立図書館で2008年に起きたBL小説廃棄要求事件の際に、図書の排除に抗議して監査請求を行った上野千鶴子さん、寺町みどりさんをお招きし、事件について振り返っていただきました。

講師:上野千鶴子(東京大学名誉教授)
   寺町みどり(「ジェンダー図書排除」究明原告団・事務局)


 今回の講演会では、最初に上野先生から、

① 図書館から特定のテーマ・特定の著者の本の排除を要求する運動が全国的に発生している。

② 「ジェンダー」に関連した問題が、政治的にホットなテーマになってくると、それが一種の踏み絵のように機能して、「ジェンダリーフリー派」とみなされた人物の著書が、図書排除要求の対象となった。他にも従軍慰安婦の問題などで同じようなことが起きた。

③ それらの運動は、インターネットで最新情報やノウハウを拡散し、地方議員を使って図書館行政に圧力をかけるなど、無視できない勢力となっている。

と、堺の事件の背景にある、全国的な図書排除要求運動の概要解説があり、この事件に自分が積極的に関わることになった経緯が語られました。




 さらに問題点として、フェミニズムの内部が分裂しており、ジェンダー図書排除には反対していても、BLのような性表現を擁護することには批判的な意見が存在することも踏まえた上で、

「イマジネーションを規制してはならない」
と、創作表現規制への反対姿勢を、

「新しい歴史教科書だって、図書館から排除されてはならない」
と、価値中立的な「知る権利」の重要性を

「フェミニズムは敵ではありません」
と、ジェンダーの話題を怖がるオタクたちへのメッセージを、

印象的な言葉で語っていました。



【関連資料】

 堺市立図書館、BL本5500冊排除騒動の顛末 『創』5月号(上野千鶴子)

 『む・しの音通信』No.68(2008.12.5発行) 特集:「ジェンダー図書排除事件」

 堺市立図書館の5706冊の「特定(BL)図書排除リスト」
 (図書館から排除された「BL小説」には、性描写の全く無い作品も含まれていました)

 みどりの一期一会 「ジェンダー図書排除事件」

 上野千鶴子さんインタビュー「ポルノがレイプを煽ってはいません」






【寄付のお願い】
 今回の講演会の冒頭、上野千鶴子先生から、
「図書排除の問題で講演に呼ばれたことは、驚くことなかれ、今回が初めてです」
とのご紹介がありました。

 それどころか自治体によっては、上野さん自身が「歩く有害情報」扱いされていて、男女共同参画系のNPOが講演に呼ぼうとしても、行政からNGを食らって企画がボツになることが多いんだとか。
 その他の自治体でも、「ジェンダー」の問題が絡む論争的なテーマは避けられて、最近の講演依頼は「お一人様」の話題ばかりだそうです。

「うぐいすリボン」のように賛同者からの寄付金のみで運営されるNPOの強みは、こうした「外圧」を受けずに済むという点にあります。
 行政や特定企業への資金依存は、「論争的」であること自体をタブーとして封印することになりかねないというリスクを抱えているのです。
 うぐいすリボンは、「表現の自由」に関する各種啓発イベントを全国各地で開催しています。今後も活動を継続していくために、皆様からの支援が必要です。
 次の世代に「自由な社会」と「豊かな文化」を伝えるため、ぜひ御協力くださいませ。
http://www.jfsribbon.org/p/blog-page_5.html